1年間の集大成
「あぁー……」
壁にもたれて、頭を抱える日向。
本番30分前。皆控え室で夜食を食べていた。
1年生部員の半数は、緊張から浮かない顔をする。
「どーしたの? そんなに緊張する?」
愛菜は平気そうだ。どちらかというと凛奈もそうだが。むしろ、楽しみだ。自分が小学校の頃はお客さん側だったのに、あのステージに北原生として立つなんて思ってもいなかったからだ。
「そりゃ……そーでしょ」
「あたしにはあんまりわかんないや」
「1年間の集大成だよ?」
『1年間……か』
この1年、いろんな事があった。あり余っているぐらいだ。
コンクールでダメ金だったこと、蒼と出会い、付き合っていること、リーダーになったこと、アンサンブルで関西に行けたこと、いろいろぶつかったり……。部活は全て思い通りにいく訳ではない。喧嘩することなんて珍しくない。当たり前のことなのだ。そんなことを学んだ1年だったのではと思う。
パンパン、と小林が手を叩く。
「あと20分で開演です。小ホールに移動していまから音出し開始」
「「はい!」」
*
「……もう時間だな」
「はい」
茉莉花が返事する。
「えー。まあみなさんわかる通り、言ってしまえば年に1回の単独コンサートです。サンフラワーはまた別ですが。この日のためにみんな努力してきたと思う。それを1番わかってるのは俺だから。たった1回のこの日を大切に、全力でいきましょう」
「「はい!」」
「部長」
「え、はい」
戸惑う茉莉花に、小林はにこっと笑う。
勘付いた茉莉花は前に立つ。
「北原、ファイトー!」
「「おー!!!」」




