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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
春のコンサートに向けて
275/423

朝、積み込み

当日の朝。年に1度の定期演奏会は、毎年朝から大忙しだ。

1年生リーダーの凛奈の仕事は、トラックに乗せられた楽器や荷物、劇の衣装を確認することだ。

これは毎年1年生リーダーがしているそうだ。

楽器を乗せる順番は、まずティンパニ。そして楽器の大きい順に乗せていく。

最後に指揮台、衣装を乗せてトラックは葉月市民ホール……葉月市民文化会館へと走り出す。

トラックの中に入り、楽器を確認し、それをキャリー係に報告する。

「チューバ人数分OK……と。次、バリサクとテナーお願いします!」

「「はい」」

自身の持っているクリップボードに書いてある『チューバ 3台』の文字を赤色で消す。

「お疲れ。体調大丈夫か?代わろうか」

「……あ、お疲れ様です」

リストからパッと目を放すと、風馬がバリトンサックスを片手に持っていた。

「大丈夫です」

せーの、と2人で協力して楽器をたてる。

「そっか」

「はい。あ、もう打楽器は全部包んでありますか?次バスドラムとチャイムとドラ乗せるんですけど……」

「んー、確認してみるわ」

「ありがとうございます」

「バスドラとチャイムOK!ドラは今から降ろすから、風馬、手伝って」

杏が呼び出す。

「了解です! じゃあ、バスドラからお願いします」

「「はい」」

風馬はトンッと踏み台を使わずにトラックを降り、杏と走りだした。

「───もう、」

杏は、頬を膨らませながら走った。

「なんだ?」

「近すぎ。凛奈と」

「見てたのか」

ぷぷっと風馬が笑う。

「後輩にやきもち?」

「もう、うるさい」

わぷっと声をあげた。

杏は、赤面を隠すために風馬に毛布を押し付けた。

「うわ、くっさ。パーカッションちゃんと掃除してんのかよ」

もごもごと喋る風馬と赤く染まりながらも笑う可愛らしい杏を、遠くから藍が目を丸くして見ていた。

「2人、付き合ってたんだ……」

「はーいお2人さん! いちゃついてないで、ドラ運ぶよ!」

「……わ! ごめん……」

また赤くなり、風馬から離れた。

風馬は藍と目が合う。

「あ、姉をよろしくお願いしますっ」

バッと頭を下げた。

「はいはい。さ、運ぶぞ」

「はい!」

「ふぁー」

凛奈は、なぜか暇になってあくびを出していた。楽器がこないのだ。

「もー、まだー?」

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