おせっかい
『……呆れられたのかな』
音楽室を出て、屋上で練習していた。
「なんで音が出ないの」
楽器の問題ではなかった。
別に部活で嫌なことやストレスが溜まるようなことがあった訳ではない。
"花野と1stを交代しろ。お前が落ち着くまで待つから"
どうして音が出ないかは、誰にも分からなかった。
小林がいつもレッスンに来てくれるプロのフルート奏者に連絡し、いくつか原因があげられたが、どれも心当たりがなかった。
何より申し訳無いのが、自分の事で他人にたくさん迷惑がかかっていること。
マイも、あと2週間なのに楽譜が大幅に変更されている。罪悪感しかなかった。
楽譜を交換している時、マイに"ごめんね"と謝ったのだ。
"全然大丈夫です! だから、ゆっくりなおしてくださいね!"
彼女の笑顔が、フッと目の前に出てきた。
「あ……」
カンッ!!!!
『?何の音?』
丁度、マイが未海を呼びにきて、扉を開けた時だった。
未海は手元が緩んでしまって、楽器を落としてしまったのだ。
「あ……やだ……ごめんね……。ごめん……」
慌てて拾って、確認した。
同時に、涙がフルートにつく。
「どうして……やだよ……みんなと……一緒に、演奏したいよぉ……ソロだって……もうやだぁ……!」
おいおいと泣きわめく。
それを聞いたマイも泣きそうになる。
こんな未海先輩を、見たことがなかった。
未海の名を呼ぶかどうか迷ったが、とにかく未海の方へ行こうとした。
足を動かすと、誰かがマイの手を引っ張った。
「あ……っ」
「しっ」
人差し指を立てていたのは、夏帆だった。
「戻るよ」
と、マイの手を引いた。
「……先輩」
「なんで、あんたが泣いてるん!」
夏帆がいきなり大声を出した。
「あの子の方がマイより何倍もいたしいんわかってるじゃろ? せやのに、なんであんたが泣いてるん! わからん?ほっといてほしいの。あんたが楽譜変わってしんどいのもわかるけどさぁ……。他の人が心配しすぎたら、未海が余計いたしなる! あんたのそのなんかしてあげようっての、おせっかいじゃけん!」
夏帆は、勢いのある広島弁で一気に話す。
彼女は前まで広島に住んでいたのだ。
「でも、でも……。先輩も泣いてるじゃないですか……」
「!」
そう、夏帆も無意識のうちに涙を流していたのだ。
「ごめん……」
未海を呼びに行ったマイも夏帆も、帰りがあまりにも遅いので、小林が様子を見にきていた。
だが、その姿を見て、身を潜めて考え込んでいた。
夏帆の広島弁を、訳すと……
「あの子の方がマイより何倍も苦しいのわかってるでしょ? なのに、なんであんたが泣いてるの! わからない?ほっといてほしいの。あんたが楽譜変わってしんどいのもわかるけどさぁ……。他の人が心配しすぎたら、未海が余計苦しくなる! あんたのそのなんかしてあげようってのが、おせっかいなの!」
になります。
広島弁に詳しい方、もしなにか間違っていたらコメントお待ちしてます( ; ; )




