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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
春のコンサートに向けて
265/423

様子を見にきたものの

「基礎合奏はこれで終わります。1時間後、もう1度集まってください。3年生も。春コン当日の予定を確認します」

「「はい」」

「「ありがとうございました」」

小林は、号令が終わるとすぐに凛奈のもとへ向かった。

ガラッ。

「香坂」

凛奈は、窓際の席に座って、顔を腕に埋めていた。

『意識がない?』

そう思って何度も声をかけた。

「凛奈。凛奈」

凛奈の肩を揺さぶる。

「ん……」

ゆっくりと起き上がる。

「凛奈。大丈夫か。どうしんどい?」

「……気持ち悪いです。酸欠みたいな感じで……」

「……そうか。今日はもう帰って」

「嫌です!」

思わず反論してしまった。

はっとなり、もう一度言う。

「嫌です。その……この時期に練習を抜けたくないんです……」

うーん、と、小林を悩ませた。

「じゃあ、……もう少し休んでろ。参加できそうならしたらいい」

「はい……」

「聖菜。ちょっと凛奈の様子見てきてくれない?」

パート練習がすでに始まろうとしていたのだ。

「……はい」

聖菜と凛奈の間に何があったのかは、誰も知らない。

『気まずいな……。なんて声かけたらいいんだろ、大丈夫?でいいかな?』

"放っといてよ!"

自分が彼女に放った言葉が、頭の中をぐるぐる羽車のように回転する。

教室の前にやってきた。凛奈が席に座っている。

小林は、凛奈の目線に合わせてしゃがんでいた。

───今なら、行けるかもしれない。

「失礼します」

と言って、そっと入った。

こちらに気づいた凛奈は慌てて目をそらす。

「大丈夫そうですか」

「参加できそうだったらさせる」

「わかりました」

《小林先生、お電話です。職員室まで来てください》

校内放送で小林が呼び出され、小林は出て行った。

「……」

「待って、」

「……ごめん」

そう言って、バタンとドアを閉めた。

「あっ、聖菜!……。」

バタバタと走って、パート部屋の前まで来たら、足を止めてしまった。

『ただの、八つ当たりだったよね……。!ううん。違う。私は本当に耐えられなかっただけ! もう知らないもん』


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