様子を見にきたものの
「基礎合奏はこれで終わります。1時間後、もう1度集まってください。3年生も。春コン当日の予定を確認します」
「「はい」」
「「ありがとうございました」」
小林は、号令が終わるとすぐに凛奈のもとへ向かった。
ガラッ。
「香坂」
凛奈は、窓際の席に座って、顔を腕に埋めていた。
『意識がない?』
そう思って何度も声をかけた。
「凛奈。凛奈」
凛奈の肩を揺さぶる。
「ん……」
ゆっくりと起き上がる。
「凛奈。大丈夫か。どうしんどい?」
「……気持ち悪いです。酸欠みたいな感じで……」
「……そうか。今日はもう帰って」
「嫌です!」
思わず反論してしまった。
はっとなり、もう一度言う。
「嫌です。その……この時期に練習を抜けたくないんです……」
うーん、と、小林を悩ませた。
「じゃあ、……もう少し休んでろ。参加できそうならしたらいい」
「はい……」
「聖菜。ちょっと凛奈の様子見てきてくれない?」
パート練習がすでに始まろうとしていたのだ。
「……はい」
聖菜と凛奈の間に何があったのかは、誰も知らない。
『気まずいな……。なんて声かけたらいいんだろ、大丈夫?でいいかな?』
"放っといてよ!"
自分が彼女に放った言葉が、頭の中をぐるぐる羽車のように回転する。
教室の前にやってきた。凛奈が席に座っている。
小林は、凛奈の目線に合わせてしゃがんでいた。
───今なら、行けるかもしれない。
「失礼します」
と言って、そっと入った。
こちらに気づいた凛奈は慌てて目をそらす。
「大丈夫そうですか」
「参加できそうだったらさせる」
「わかりました」
《小林先生、お電話です。職員室まで来てください》
校内放送で小林が呼び出され、小林は出て行った。
「……」
「待って、」
「……ごめん」
そう言って、バタンとドアを閉めた。
「あっ、聖菜!……。」
バタバタと走って、パート部屋の前まで来たら、足を止めてしまった。
『ただの、八つ当たりだったよね……。!ううん。違う。私は本当に耐えられなかっただけ! もう知らないもん』




