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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
春のコンサートに向けて
263/423

別れと笑顔

「桜先輩! 紗江先輩!」

「おおおみんな!」

卒業式。トランペットパート5人は、大量のプレゼントと花束を2人に渡す。

桜と沙江の母たちは、木の下で話している。

「先輩が卒業しちゃうなんて、私まだ聞きたいことたくさんあるのに……」

「だーいじょうぶ! いつでも電話してきたらいいじゃない!」

「はい……」

桜がぽんぽんと杏の頭を撫でる。

「ほんと、入退場のみんなの演奏感動しちゃったよ〜。結構泣いてる人いたよ? 感動して」

「本当ですか!」

「先輩、高校はどうするんですか?」

「春コン一緒に出てくれますよね?!」

加奈子と聖菜の2人は質問攻めする。

「私は皇城高校の音楽科」

「紗江は高山台」

と、2人はピースをする。

「「え!?」」

「桜先輩、桜橋行くんじゃなかったんですか?」

「んー、まぁ、気が変わった?ってゆーかね」

「それで、春コンは?」

「春コンはー……。皇城が2部で、そっちに出ないかって誘われてるんだ。だから、春コンでることができて3部かな」

「紗江は、全部いけるよ」

「ほんとですか!」

わぁっと喜ぶ。

「あ」

凛奈は何かに気付き、走り出した。

「え、ちょっと、凛奈!」

聖菜は走り出す凛奈を静かに横目でみた。

「帆南先輩!」

帆南が、母親と一緒にいる姿を見つけた。

「凛奈……」

「あ、あの、ご卒業おめでとうございます」

と、小さな花束を手渡す。

少し驚いていたが、彼女はにこっと受け取った。

「ありがと」

にっこりと笑う彼女は、あの頃よりも穏やかだった。

「……あの人、誰ですか」

遠くからその眺めを見ていた6人。

聖菜は、静かに聞いた。

「あー、そっか。聖菜は知らないんだ。あの人はね、……聖菜が転校してくる前までトランペットパートにいたんだけど、辞めちゃったんだ」

早苗が説明する。

「……そうなんですか」

帆南は、6人がこちらをみていたことに気付いた。

「ほら、待ってるよ。"トランペットパート"のみんなが」

「……はい。さよなら!」

「ばいばい」

と、凛奈は皆のところに戻る途中、

「凛奈!」

と帆南が叫ぶ。

「は、はい!」

「トランペット! 頑張るんだよ」

と、笑顔で手を振る。

「……はい!」

帆南の笑顔は、今までで1番輝いていた気がした。

「凛奈ー!」

「はーい」

杏に呼ばれ、6人の元へ戻って行った。

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