別れと笑顔
「桜先輩! 紗江先輩!」
「おおおみんな!」
卒業式。トランペットパート5人は、大量のプレゼントと花束を2人に渡す。
桜と沙江の母たちは、木の下で話している。
「先輩が卒業しちゃうなんて、私まだ聞きたいことたくさんあるのに……」
「だーいじょうぶ! いつでも電話してきたらいいじゃない!」
「はい……」
桜がぽんぽんと杏の頭を撫でる。
「ほんと、入退場のみんなの演奏感動しちゃったよ〜。結構泣いてる人いたよ? 感動して」
「本当ですか!」
「先輩、高校はどうするんですか?」
「春コン一緒に出てくれますよね?!」
加奈子と聖菜の2人は質問攻めする。
「私は皇城高校の音楽科」
「紗江は高山台」
と、2人はピースをする。
「「え!?」」
「桜先輩、桜橋行くんじゃなかったんですか?」
「んー、まぁ、気が変わった?ってゆーかね」
「それで、春コンは?」
「春コンはー……。皇城が2部で、そっちに出ないかって誘われてるんだ。だから、春コンでることができて3部かな」
「紗江は、全部いけるよ」
「ほんとですか!」
わぁっと喜ぶ。
「あ」
凛奈は何かに気付き、走り出した。
「え、ちょっと、凛奈!」
聖菜は走り出す凛奈を静かに横目でみた。
「帆南先輩!」
帆南が、母親と一緒にいる姿を見つけた。
「凛奈……」
「あ、あの、ご卒業おめでとうございます」
と、小さな花束を手渡す。
少し驚いていたが、彼女はにこっと受け取った。
「ありがと」
にっこりと笑う彼女は、あの頃よりも穏やかだった。
「……あの人、誰ですか」
遠くからその眺めを見ていた6人。
聖菜は、静かに聞いた。
「あー、そっか。聖菜は知らないんだ。あの人はね、……聖菜が転校してくる前までトランペットパートにいたんだけど、辞めちゃったんだ」
早苗が説明する。
「……そうなんですか」
帆南は、6人がこちらをみていたことに気付いた。
「ほら、待ってるよ。"トランペットパート"のみんなが」
「……はい。さよなら!」
「ばいばい」
と、凛奈は皆のところに戻る途中、
「凛奈!」
と帆南が叫ぶ。
「は、はい!」
「トランペット! 頑張るんだよ」
と、笑顔で手を振る。
「……はい!」
帆南の笑顔は、今までで1番輝いていた気がした。
「凛奈ー!」
「はーい」
杏に呼ばれ、6人の元へ戻って行った。




