自分勝手
とぼとぼと歩いていると、中庭で2年生たちが楽しそうに弁当を食べていた。
「私たち、あんな風に戻れるのかな……」
「あ、凛奈!」
と、夏帆が手を振る。
と、その手には自分の弁当が握られた。
「一緒に食べようか。おいで」
「……はい」
「で、どう思う?愛菜は」
巫愛と愛菜は、トロンボーンの教室で、弁当を食べていた。
あの雰囲気では食べずらかった。
だから、幼馴染の2人きりだと、気軽だった。
「あたしたちさ、一般バンドにも入ってるけどさ……。なんて言うか、パートリーダーとか団長とか、だいたいオッサンかオバサンしかやってないじゃん。だから、リーダーの気持ちわかる子なんて、ほんの数人だと思った」
「それ! 私も思った」
と、巫愛が共感してぴんと指差した。
「正直、リーダーって、なんでどいつもこいつも自分勝手なんだろうとか思ってた。だからいつかは自分がその立場になって、絶対にいい雰囲気にしてやるとか思ってたけどさ」
「うん」
「……。あたし、楽団抜けよっかな」
愛菜がポツリと言った。
「……そんな簡単に決めれることじゃないと思うよ。だって、そのために楽器買ってもらったんだし」
「いつかは抜ける日がくるんだし、そもそも、いまここがある」
「まぁ、あんたが抜けるなら私も抜けるけど、でも」
「でも?」
「リーダーのこと自分勝手って言う自分たちも自分勝手、なんじゃないかなぁ〜って」
と、腕をぎゅっと握りしめた。
凛奈はそれを、扉の向こうからそっと聞いていた。そして、決心がついたように走り出した。




