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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
春のコンサートに向けて
256/423

震える勇気

凛奈が音楽室を去った後、妙に沈黙が続いたが、誰かが吹き始めると、パラパラと音が鳴り出した。

不安や悲しさを吹っ飛ばしたいのか、トロンボーン2人はバリバリと爆音を鳴らしていた。

遠くでずっとみていた茉莉花が、動き出した。

先ほどまで凛奈が座っていた指揮台に立ち、音を止める合図をする。

「みんな、いい」

「「……」」

「いいですか」

「「はい」」

返事がほぼないと見なした茉莉花は、もう一度同じ事を言った。

「あの子が、今なにを考えてるかは、みんなで考えろとは言いません。だけど、」

誰かがごくりと息を呑む。

「あの子は、リーダーを自信満々にやっている訳じゃないです。リーダーにとって自分だけで判断するのはとても勇気がいることなんだよ。いまはあの子だけがリーダーという立場だけど、私たちが引退したらみんなわかると思う」

なにか違ったことを茉莉花は話している。

まるでいままでの状況の、一歩先を話しているようだった。

「ただ、みんなの意見を聞いてばかりでは判断出来ない。みんなの心を1つにするには、自分の考えが、……勇気がいるけど、必要だと思う。それを分かって、あの子が戻ってきたら目を合わせてあげて」

「「……」」

「今日の午前練はこれで終わりにします」

次は、返事を待たなかった。

「「ありがとうございました」」

聖菜はなにがあったかはわからないが、なんとなくで察していた。

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