表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
後悔を笑顔に変えたい
251/423

後悔なんて、捨てた

「後悔なんて、捨てた───!」

1年前、あの川で泣きながら叫んだ。

そして、最近はいつもその川でクラリネットを吹いている。

だが、今日は吹かなかった。

チラリと自分の楽器ケースを見た。

昨日、ほぼ1年ぶりに奈津と話した。

あんなに、明るくなっているとは思ってもいなかったのだ。1年前は、もっとおどおどしていたのに。

そんなことを考えていると、トランペットの音が聴こえてきた。

凛奈だった。隣に来て吹き続けた。

「……上手いね。さすがだよ」

と、また顔を埋めると、今度はアルトサックスの音が聴こえてきた。

「奈津……」

この曲。誰もが一度は吹いたことのある曲。

『上手になってる……』

奈津の心地よい音色に、目を瞑る。

「───え」

目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。

勝手に手が動いてしまい、楽器を取り出した。

音出しも、マウスピース練習もまったくしなかった。

『なんで、こんなに綺麗な音色が奏でられるんだろう』

柚子の美しい音が響き渡る。

マウスピースを口から離し、柚子は目をごしごしこする。

止まったかと思えば、また流れ出してくる。

「う、わぁぁぁぁ」

いままでの思いが、溢れ出して止まらない。

「後悔なんて、捨てた───はずなのに」

「柚子、ごめんね」

奈津の言葉に、泣き崩れてしまった。

「……私も、ごめんね……ほんとは、戻ってもいいかなって、戻りたいって……」

「いいんだよ。戻って来てよ。待ってる。みんな。だから、だから……」

「ごめんね、ごめんね……」

柚子は、ただごめんね、と言う言葉を繰り返していた。

どういう意味のごめんね、なのかは、このとき2人とも理解できていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ