合奏前に
その後、部活が終わると、2年生全員は公園に集まってミーティングをしていたらしい。
1部では、塾を休んでまでそのミーティングに全員が参加したそうだ。
実際、昨日、テストが近いのに蒼は塾に来ていなかった。
明日からテスト期間。今日が、最後の練習となる。
「北原山の第1公園あるでしょ? 昨日そこで8時ぐらいまでずっと話してたらしいよ。なんか、泣いてる人もいたみたい。お母さんが言ってた」
ひそひそと話し声が聞こえる。
だが、2年生はなにもなかったかのようにいつも通りだ。
「凛奈!」
合奏が始まる前、奈津にまた楽器庫へと呼び出された。
「先輩、昨日……」
「あのね!」
奈津ははしゃいだ子供のように目を輝かせた。
「昨日、私柚子の家に行って、話したの。話せたの。部活のこと、これからのこと……。だから、私と柚子はもう大丈夫!」
彼女は、ありがとね、と目に浮かんだ涙を拭き取った。
「じゃあ、柚子先輩は……柚子先輩は部活に戻ってくるんですか?」
奈津は、笑顔を押し込め、悲しい顔で首を振った。
「まだわからない。戻れないって。でも、私たちばかりが原因じゃないって」
「嘘です。嘘ですそんなの。だって、柚子先輩は……」
と、にっこり笑って、凛奈の頭の上に手をポンっと置いた。
「わかってる。だから、今日河川敷一緒に行こう」
「……はい!」




