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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
アンサンブル関西大会
242/423

小林の車の中

目が覚めると、車の中にいた。

「小林先生の、車……?」

混乱してしまい、自分の記憶を辿る。

控え室で休んでいたはず。

いや、控え室での記憶がない。

「あ、起きた?」

「は、はい……」

と、運転席にいた小林が、凛奈が起きたことに気付く。

「……柚子に会ったか?」

「えっ」

小林がなぜそう思ったのか、わからなかった。

「見たから。俺も、あいつが来てるの」

やっぱり、柚子は来ていたのだ。

「どうして、天瀬先輩は辞めちゃったんですか?」

「……それを聞いて、お前はどうするんだ?」

「……」

黙りこんでしまった。

理由がないのだ。聞いて自分が得する訳でもないし、逆に損する訳でもない。

「知りたいだけです」

口からポロリと出てしまった。

小林は少し黙り込み、口を開いた。

「『リーダーだからって、調子乗ってる』。そう言われてた。 だめだと思うことをはっきり言う子だったから」

その瞬間、凛奈は凍りついた。

言葉が出なかった。

そして、俯き、少しして口を開いた。

「辞めて、やっぱり部活に戻りたいって柚子先輩が思ってるなら、私は戻ってきて欲しいと思ってました。だけど……」

そんな雰囲気で辞めたのなら、後悔しても戻れないだろう。

だが、何故柚子は関西大会に来たのだろう。

やはり、戻りたいのだろうか。

戻っても、気まずいかもしれないのに。

窓の外を見ると、まだ見慣れない景色ばかりだった。

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