発熱
「小林先生、あの……」
「はい」
片付けをしていたら、東野のピンクのオーボエのケースを肩に下げた少女が小林に声をかけた。
「あの、ちょっと来てもらってもいいですか」
と、彼女に着いていった。
途中で、息を切らしながら茉莉花がやってきた。
「先生、香坂さんが見当たらないんです」
と、東野の少女と、小林と、茉莉花の3人が歩いていくと、廊下の隅に、ぐったりとうずくまった凛奈とそのまわりにフルートのケースを持った少女たちがいた。
「北原中の子ですよね。熱があるみたいなんですけど……」
はぁ、と一息つき、小林はにっこりと笑い、
「わざわざありがとう」
と言った。
「はい。それじゃ失礼します。さよなら!」
と、礼儀正しく挨拶し、少女達は去っていった。
「泉、香坂は俺が連れて帰るから、とりあえず駅前の公園でミーティングするから、俺が指示するまでロビーにいて」
「はい」
と、茉莉花も走っていった。
「香坂、おーい。聞こえるか」
「はい……」
案外すぐ目が覚めた。
「立てるか? 控え室一個空いてるから、そこで休んでろ」
「はい……」
と、少し歩き、あと少しのところでうずくまってしまった。
「……香坂」
「すみません……」
仕方ない、そう思い、凛奈を持ち上げ、控え室まで運んだ。
途中で、凛奈は意識が遠のいてしまった。




