オーディション当日
土曜日。ついに、オーディション当日。ほとんどの部員が朝早くから練習に来ている。
凛奈はケースから楽器を出して、屋上へ向かう。
凛奈のお気に入りの練習場所。あまり響かないので、響きを今よりも増す事ができる。
階段を駆け上がる。音出しをして、オーディションで吹くフレーズを練習すると、合わせてフルートの音色が聞こえてくる。隣の校舎の屋上にいたマイだ。吹き終わると、
「凛奈ーー! 絶対、ぜーったい、コンクールメンバーになろーねー! 先輩に負けるなー!」
笑顔でマイが叫ぶ。
「うん! がんばろー!」
と、凛奈はピースサインをおくる。
オーディションの控え室は、多目的室だ。出番が近くなると、音楽室前の廊下に並んでいる椅子に座って待機する。
「次、トランペットです!」
「「はい!」」
音楽室へ向かう途中、
「あんま緊張してたらだめだよ」
と、ぽそっと紗江が言う。
「自信持たなきゃ」
紗江はそう言い、余裕の笑みを見せる。
はい、と凛奈も笑う。
オーディションが終わり、凛奈はホッとしたのか、安堵のため息をついた。
2の1へ戻る途中、オーディションがすでに終わっているフルートパートとすれ違った。
凛奈は、マイに再びピースをおくった。
《お・つ・か・れ》
と、マイは口をパクパクさせながら凛奈に伝える。