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緊張は恐怖へ変わるのは
「はぁ……」
緊張してどんどん凛奈の顔が暗くなっていく。
あと1時間。
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凛奈の目には涙がうっすら浮かんでいた。
あと、10分。
他の部員たちの、木管2年生たちの、聖菜の、自分たちの目指した舞台。
どうしよう。もし、私が───。
その先を考えると同時に、誰かが自分の肩に手を置いた。
「どうしたの? 大丈夫」
リハーサル室を出るときだった。
話しかけたのは、ユリカだった。
その手は、かすかに震えていた。
そうだ。ここにいる皆、関西大会は初めてなのだ。
怖いのは、自分だけじゃない。
「怖い?」
「はい」
と、素直に返事した。
すると、彼女は少し寂しく笑って、
「私も」
と呟いた。
「でもね、うれしいって気持ちに切り替えることにしたから」
と、前を向き、振り向く事なく舞台裏へ歩き出した。
その背中に、凛奈はついていった。
「プログラム12番、葉月市立北原中学校。金管9重奏。曲目は、To our glorious futureです」
あかりがつく。
ドクドクと心臓がなるが、笑顔で、楽器を構えた。スッ、と9人のブレスが揃った。




