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柚子と関西
日曜日。
凛奈は、アンサンブルの練習を朝早くからするために、3人と別々に早く学校へやって来た。
「失礼しました」
鍵を取り、音楽室に向かった。
「だけどさ、いまは関西大会のサポートしっかりしなきゃ」
中庭から、奈津の声が聞こえた。
「じゃあ、関西大会が終わったら?」
「……」
もう1人は、おそらく鈴音だろう。
凛奈は、廊下から中庭を覗いた。
2人は、中庭のベンチで話していた。
「もうさ、あれから1年だよ? 普通に柚子に話しかけられて固まってさ、」
「大丈夫。あの時はちょっと驚いただけ。とにかく、いまは関西大会だよ。それが終わったら自分で解決させる」
『柚子先輩のことだ……。でも、今は……』
今は、関西大会に集中しなければいけない。
あと1週間、どんな練習をするかで結果が決まってくるのだ。
忘れよう。今だけ。そう自分に言い聞かせ、音楽室へ向かった。




