緊張
蒼は、そのまま眠ってしまった。
『血、やっと止まった……』
と、手を離した。
かくっと頭が動いてしまったが、なんともないようだ。
「よかった……」
蒼に毛布を掛け、下に降りた。
「あの、」
「あ、蒼兄ちゃん鼻血止まった?」
乃愛がお菓子を食べながら話す。
「あ、うん」
「そう。じゃあ、凛奈ちゃん、そこに座って」
「ありがとうございます」
と、椅子に座った。
「あの子ね、昔から体弱くて。中学に上がってからはまぁなんとか安定してたけど」
「そうなんですか……」
緊張で、顔を下に向けた。
そういえば、夏休みも何度か休んでいた。
「鼻血も多くてね。1度出たらなかなかとまらないの」
と、彼女はクスッと笑った。
「ま、でも良かったわ。しっかり声が出るようになって」
「え、」
「あら? 覚えていない? 私ね、看護師なの」
と、髪を縛った。
「あ!」
失声症で病院に言ったときの、看護師だ。
「まさか、香坂先生の娘さんだったとはね〜」
「あ、あの時はありがとうございました!」
立ち上がって、お辞儀した。
「よかったわ。蒼も心配してたから」
「はい……」
「あ、そろそろ暗いから帰る? 蒼も呼んでくるよ?」
「あ、大丈夫です! お邪魔しました!」




