結局後悔しているのだろうか
「16分音符します」
「「はい!」」
凛奈は、前のように笑顔で基礎練習をする優香を見て、何があったのか、と不思議に思った。
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「16小節目トランペット伸ばして下さい」
「「はい!」」
キィィィ……
屋上の扉が開く。
「あ、ごめん、練習中。凛奈、来れる?」
優香が顔を出した。
「いいよー」
茉莉花が笑顔で答える。
「ありがと」
凛奈は、何故自分が呼ばれたか全くわからないままついていった。
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「凛奈、なんかごめんね」
「え、」
「関係ない1年生まで巻き込んで。ほんと、自分に呆れちゃったよ」
と、彼女は俯いて悲しく笑った。
「どうして、こんなに立ち直ったんだとか思ってる?」
「え、いや」
と、優香がクスッと笑った。
「去年、吹部を辞めた子と、話したの。じゃあさ、」
「それって柚子先輩ですか?」
優香は驚いた顔を見せて、
「なんで、知ってるの?」
と聞いた。
「え、と。たまに話したりしてます」
「……ふーん。まぁ、柚子にさ、辞めても戻りたいってわめく自分みたいに馬鹿みたいな人が増えて嬉しいとか言われて、自分、何してんだろなって思って」
「そう、ですか」
少し前に彼女に聞いた。
『先輩は、後悔してないんですか?』
『どうだろうね』
柚子は、後悔しているのだろうか。
彼女のあの不思議な笑顔が、また頭によぎった。




