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柚子を心配していた奈津
「あれ? 奈津はー?」
柚子が、奈津に英語の教科書を返しに来たとき、奈津はいなかった。
「藤森さんなら、保健室にいったよ」
「そうなんだ。じゃあ、これ奈津の机に置いといてほしい!」
と、友人に教科書を手渡した。
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放課後。柚子は奈津に教科書のお礼を言おうと音楽室の前に来た。
「あ、伊織!」
丁度伊織が通りかかった。
「奈津いる?」
「もう帰った」
なぜか伊織は冷たくそう言った。
「じゃあさ、奈津に」
「もう奈津に近づかないで」
いきなり言われたその言葉に、柚子は唖然とする。
「……は?」
「あの子の気持ちまで考えずに退部して、それなのにまた近づいて」
「……奈津が、私のこと心配してたっていうの?」
「そんなの自分で考えてよ」
涙声でそう言って、音楽室へと入っていった。
柚子は、いつも話をしている伊織にそんなことを言われて、なにが起こったのかわからなかった。




