表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
悔しさから広がる苦しさ
210/423

分かりきれない悩み

「優香、待って!」

優香に追いつく10メートル先で、彼女は振り向いた。

「なに」

彼女の凍った瞳を見て、和音と風香は顔を合わせた。

「え、と、その……」

「あのさ、やっぱその……、関西行けなくて悔しいのはわかるけどさ、」

「えと……、優香が悪いわけじゃないじゃん? 皆頑張ってたし、なにより」

「なんでそんなこと言えるの?」

優香が問いかけてきた。

「知らないくせに。なにも、知らないくせに。私がどんな気持ちでアンコンのぞんだか。なにもわかんないくせに。なにがわかるって言うの?」

はっ、と冷たく笑い、震えた声で尋ねる。

「アンコンなんて、最初から出なかったらよかったんだ。こんな思いするんだったら。じゃ、私帰るから」

震えたその声で、また、優香は歩き出した。

「アンコンなんて……? 出なかったらよかった……?」

優香のその言葉に、ピクリと握っていた手が動いた。

「……和音?」

次の瞬間、和音の顔が上がり、その顔は真っ赤になっていた。

「そんなこと言わないでよ! 出たくても出られなかった人だっているのよ!? なに贅沢なこと言ってんの! 頑張ったんでしょ?! 楽しめたんでしょ?! 私だってあの舞台に立ちたかった! 秋桜で、最高の演奏をしたかった! だけど、出られなかった!だから他のこと頑張ってたのに! 私たちの気持ちまで背負って出られた人の応援だって! 」

和音の涙の訴えを無視し、スタスタと歩き続ける。

「なにもわかってないのはあんたのほうよ!」

優香の肩が上がる。

そのまま、彼女は学校を去ってしまった。

「和音……」

ぐすぐすと鼻をすする和音の背中を、風香はさするしかできなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ