208/423
パートリーダー放置
その日の放課後、優香は部活に参加していた。
だが、なかなか基礎練が始まらなかった。
パートリーダーは優香なので、優香が指示を出さない限り始まらない。
トトトトトトトトト……。
彼女は1人スティックで8部音符を刻んでいた。
「ね、優香、基礎練いつ始め」
「勝手にやっとけば」
穂花の言葉を遮り、スッと彼女の横を通っていった。
そして、優香は振り向き、彼女に向かって言葉を放った。
「私、パートリーダー辞める。しばらく曲も小物する。進行も穂花がやって。私がやるより絶対いいから。私帰るね」
と、荷物を背負って、出席表に『早退』の文字を入れて、音楽室を後にした。
穂花は硬直し、1年生2人はおろおろと顔を見合わせる。
周りの部員も優香の言葉が聞こえており、ざわざわと騒ぎ始めた。
「ねぇ、ちょっと……」
和音と風香が優香を追いかけて行った。
「穂花」
暗い顔で振り向いた穂花を手招きしたのは、茉莉花だった。
「基礎練はノノカに任せて、ちょっと来てくれない?」
茉莉花は優しい笑顔で穂花の手を引いた。




