伊織と奈津
「はぁ……」
月曜日。凛奈は薄暗く、なんだか心に何かが残ったまま、登校した。
『なんで、こんなに、もやもやするんだろう』
と、オーボエの音が聴こえてきた。
おそらく伊織だろう。
彼女は、夏のコンクールには出場できなかったが、音は夏に比べて随分とよくなった。
「綺麗」
マイの言葉に、凛奈も樹奈もうん、と頷いた。
だが、麻由は、
「でも、なんか寂しい」
と呟いた。
「あ、」
オーボエのスケールの音が急に止まってしまった。
「行こっか」
4人は、おはようございます!と挨拶して音楽室に入っていった。
パーカッションを見ると、いつも朝練に参加している優香はいなかった。
楽器を出して、屋上へ向かう途中、伊織のいる渡り廊下の前を通ると、伊織は奈津と話をしていた。
なにやら深刻そうで、邪魔してはいけないと思って走って屋上に向かった。
〈なにかあったら私たちに言ったらいい〉
奈津の言葉を思い出し、立ち止まってしまう。
同時に、柚子の
〈所詮そんなもんだよ、部活って〉
と言う言葉も頭に蘇ってきた。
この時、まだ優香の事をよくわからずに、大丈夫なのだろうか、いや、きっと大丈夫だろうと凛奈を悩ませた。




