番外編 トランペット3姉妹
200話記念です!
「茜ー! あんた楽器玄関に置きっぱなしじゃない!邪魔だからどけてよー」
「んー、もう、ちょっと待ってよー」
帰ってきたばかりの姉に怒られる。
茜と呼ばれる少女は、北原中学校吹奏楽部の夏のコンクールのビデオ映像を見ていた。
「ねぇ、お姉ちゃん、」
「なによー」
「音形そろわなすぎね」
と、姉にゴンとこぶしを押し付けられる。
「いった」
「うるさいなぁ。てか、人のこと言えるの? 今年3位だったらしいじゃん」
「別に、てか、全国大会だよ? これ県大会じゃん」
「あんたも来年からここに通うんだよね? うん? せっかく楽器買ってもらったんだから続けなさいよ?」
茜はぶすっと頬を膨らませた。
「あ、」
トランペットのソロが始まった。
「ねぇ、お姉ちゃん、このトランペットの人ってあれだよね? なんとか凛奈」
「そう。香坂凛奈。それがどうしたの?」
「別にー」
NIO出身の天才トランペット少女。
東野ではそう呼ばれていた。
茜はそう答えたが、その映像に熱中していた。
「あー、凛奈の音色に魅了されちゃった?」
にやりと笑う姉に、
「さっさと勉強してこい受験生」
と、ポソッと言った。
「うるさい。さっきまで先生の家で勉強してたのー」
茜の頬を引っ張る。
「痛い痛い! もうさっさとどっか行け!」
茜も姉の頬を引っ張る。
「2人ともやめなさい! 」
母が大声を出す。
「もう、」
と、姉は2階へ上がった。
「ご飯はー?」
「あとで食べる」
「はーい」
姉が2階へ上がると、もう1人の姉が部屋から出てきた。
「あ、CD借りるよ、トランペットの」
「うん」
「てか、桜と茜また喧嘩してたの?」
「まあね」
桜。そう、星野 桜だ。
茜は、星野 茜、小学6年生。東野小学校吹奏楽バンドでトランペットのトップ座席へ座り続ける少女。
そして、桜と茜の姉、星野 楓、桜橋高校1年生。楓も、東野小学校出身で、小6、中3はトップに座り続けたトランペット奏者である。
楓も北原中学校出身である。
3人合わせて、天才トランペッター3姉妹なんて言われたこともあった。
「あの子、凛奈に憧れたみたい」
ポソリと言う桜の言葉に、楓はうん?と聞き返した。
「なんでもない」
と、桜は自分の部屋へ入っていった。
その頃、茜はずっと凛奈のソロを繰り返し見ていた。
「不思議な音色」
ポソリとつぶやいた。




