プログラム18番「To glorious future」
【プログラム18番、北原中学校、金管9重奏。曲目は、To our glorious future です】
ぱちぱちぱち……
ドクドクと心臓がうるさい。
吐き出す息も震えていたが、深呼吸をして抑える。
楽器を構え、杏が合図を出す。
ベースにのせてハーモニーが響く。
ゆっくりとしたホルンのメロディーから、輝かしいトランペットの音が響く。
綾乃のソロが始まる。
彼女のホルンの音色は美しく、どこまでも響き渡る。
高い音も安定して、さすが綾乃である。
そして、2楽章。凛奈は前にでた。
眩しい照明。目が痛くなるくらい。
『届け!』
マウスピースに息を吹き込む。
振動する楽器、美しいビブラート。
人々を感動させる音を。
そして、綾乃も前に出てきて、2人向き合う。
2人のアンサンブル、もうすぐあの場面だ。
どうしても2人で吹きたかった。
だけど、だけど……。
そして、もう一度ブレスして、トリルをする。
綾乃も入る。
また心臓がなりだす。
9人全員に緊張が走る。
1度2人とも吹き終わる。ここからが難点なのだ。
『……え』
なんと、揃ったのだ。
いままで全然揃わなかったのに。
高らかに美しく響くビブラート。
そして、全員で吹き始める。
1番心配されていた2楽章も、無事終了した。
もとの場所に戻り、ついに最後の3楽章だ。
凛奈もトランペットに持ち替えた。
華やかなトランペットのファンファーレに、トロンボーンも加わり、この曲で、1番響き渡るほどだった。
ユーフォ・チューバの掛け合いとともに、ユニゾンのメロディーが始まる。
最後に、もう一度ファンファーレをして、終了した。
汗だくになりながら、楽器を下ろした。
音1つない空間だ。
前を向いて、お辞儀をする。
大きな拍手が飛んでくる。
『終わった……』
ほっとしたと同時に、涙が出てきた。
【只今の演奏は、北原中学校の皆さんでした】




