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泣きはらした顔の奥
「北原中学校の方、記念撮影しまーす!」
「「はい!」」
「やだー、この目で写真うつるのー?」
優香が冗談混じりで言う。
と言いつつも、笑顔で写真にうつった。
「ねぇ、みんな」
「ん?」
穂花が呼びかけた。
「ありがとう。ほんとに。あと1年もないけど、よろしくね」
彼女は一筋の涙を流した。
「さ、次は金管だよ!」
「先輩行きましょ!」
4人はまたホールの中へと入っていった。
「あ、私と穂花マレットなおしてくるから、先行ってて!」
「「ありがとうございます!」」
「ねぇ、穂花」
「うん?」
急に優香が立ち止まる。
「届いたよね。会場のみんなに」
「……うん。届いた」
「千尋先輩にも……」
その言葉に、ピクリと穂花が反応した。
「別に、去年のことばっかりじゃなくても、」
「でも、忘れられるわけない。でも、でも……」
「でも?」
「もう、疲れちゃったよ」
また涙を浮かべる。
「まぁ、忘れろとは誰も言わないからね」
穂花も苦しくなったのか、さっと流した。
「……」




