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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
アンサンブルコンテスト
193/423

プログラム2番「情熱火花」

「北原中学校のみなさん、こちらへどうぞ」

音出しが終わり、パーカッション4人は舞台裏へと向かっていた。

ぱたぱたと乾いた足音が響く。

沈黙の中、急に夢跳愛が立ち止まった。

「どうしたの?」

穂花も立ち止まり、それにつられて麻由と優香も立ち止まった。

「や、ちょっと怖くなっちゃって……」

震える声、こぼれ落ちそうなくらい目に溜まった涙。

それを見た優香は、カッと目を見開いた。

「泣くな!」

びくりと体を震わせる夢跳愛。

と、優香は今度は優しい笑顔で言った。

「泣くのは、終わってからにしよう」

「……はい!」

ゴシゴシと目をこすり、よし、と、4人でで笑顔で向かった。

「千尋先輩、見てくれてるかな」

ポソッと優香の言った言葉が、1年生2人にはあまり聞こえていなかった。

だが、穂花には聞こえていた。

「大丈夫。リベンジするよ」

2人には、あまりよくわからなかった。


【プログラム2番、北原中学校、打楽器4重奏。曲目は、情熱火花です】

ぱちぱちぱち……

『頑張って……』

金管メンバー達は祈る。


皆、1度目を見合わせる。

凛奈は、優香が何かを喋っていることに気付いた。

そして、皆構えて、穂花の深いブレスで始まった。

穂花のグロッケンソロから始まる。

ソフトで、ゆっくりなリズム。

鍵盤担当は夢跳愛と麻由だが、2人は最初トムトムと小物をするため、ソロは穂花が担当する。

グロッケンのソロの途中から優香、麻由、夢跳愛の3人のソリも始まる。グロッケンと全く拍の合わないリズム。

突然グロッケンの音が消える。ティンパニの割れそうなくらいの音で、掻き消されたのだ。

ダンッ!ダンッ!

sffzでリズムを打つ。

スネアに戻った穂花が、ざかざかとロールを始める。

2人も鍵盤楽器に戻り、和音を響かせる。

優香がシンバルにうつり、スネアとシンバルのソリ。



涙が出てきた。

「……かっこいい」

真剣に音楽を愛して楽しく演奏する4人の姿がとてもかっこよかったのだ。

曲の後半、今度は麻由がビブラフォンソロをしている間、静かにトムトムのセットを2セットずつ、つまり太鼓を8つ並べた。

そして、また自分のところへ戻った。

クライマックスと近づき、4人の背景は曲名のように赤く燃え上がる炎のようだった。

またsffzでのリズムを打ち、穂花がトムトムの前に並ぶ。

そして最後、穂花が走りながらトムトムを順番に叩き始めた。リズムはバラバラで、8つの太鼓を3往復して、最後にバンッ!と太鼓の皮が破れるくらいの音を鳴らして、終了した。



息切れしながらも、深呼吸をしてマレットを下ろした。

正面を向いて、お辞儀する。

会場の全員がその空気に飲み込まれていた。

一瞬沈黙があったが、その後盛大な拍手が巻き起こった。

【只今の演奏は、北原中学校の皆さんでした】

アナウンスと共に退場する。

汗だくのなか、優香は汗に紛れて涙を流していた。

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