合宿2日目 バスの中
「あー」
「もう無理……」
13人はぐったりとした様子でバスに乗り込む。
ホールを出て、高山台高校へと向かう。
「タカタッタトトタッツタ」
と、小声で言いながらイヤホンをつけて楽譜の上を叩いている者がいた。
優香だ。
優香は、今回のコンクール曲、「情熱火花」でティンパニを担当する。
「優香、またやってる」
「情熱火花のティンパニ、難しいもんね」
凛奈は思った。
彼女はなぜ、あんなに必死なのだろう。
別に、自分がやる気がないだとか、そう言うのではないが、なぜか、アンコンになると顔色を変え、必死に、休むことなく練習する。
「あ、席あいたよ。座ってきな」
と、麻由に背中を押された。
その先には、蒼が座っている。
「……ん」
と、顔を赤くしながら蒼がポンポンと自身の隣の席を叩く。
座れということなのだろう。
「……ん? 狙った……?」
麻由をみると、彼女はふふん、と得意げに笑っている。
凛奈は蒼に言われたままに座る。
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『あ、やばい……』
寝不足と足元からの温風で、眠気が襲ってくる。
意識が飛びそうなところで、ぐらぐらと揺れる凛奈の頭を蒼が自分の方へ向け、凛奈はそのまま眠ってしまった。
気付けば、蒼も眠ってしまっていたようで、2人とも顔を近づけて眠っていた。
「なにあれー」
と、皆はクスッと笑う。
ユリカは、ケータイでこっそり写真を撮った。
「かわいいなぁ」
と、呟いた。




