藍沢 マリア
すっと手が上がった。
マリアだった。
凛奈はコクリと頷き、マリアは立ち上がった。
フランスのこと振り返るみたいだけど、
私、幼稚園を卒園して、すぐにフランスに引っ越したんだ。
心細かったし、毎日寂しかった。
日本の友達が恋しくなった。
フランスで辛いことがあったり、悲しいことがあったら毎日、美奈ちゃんと撮った写真を見て、泣きながら
「明日も頑張る。頑張ればきっと美奈ちゃんが笑ってくれる」
って、6年間ずっと写真を大切にしてた。
10歳からテナー始めて、日本に帰ったら吹奏楽部に入ろうって。
毎日、とても楽しみにしてて、今年の春、やっと日本に戻ることができた。
美奈ちゃんとまた会えて、一緒に吹部に入った。
毎日とても楽しかったけど、最近、なんだか……。
小学校からやらなければ良かったって、毎日思ってる。それどころか、テナーなんてやらなければよかった。て思った。
ただ、経験者と初心者って言葉がこの部活に必要ないと思うの。
なくなってほしい。
私の他にも、そんなこと思ってた人はいると思う。
だから、なくなるようにしたい。
確かに、技術としてはうちらの方がだいぶ上とか上手かもしれない。だけど、この吹奏楽部で活動する仲間としては、全員初心者なんだ。
小学校の頃からソロでやってたり、バンドに入ってたとしても、この"北吹"で活動するのは、全員4月のあの時は初めてのことな訳で、全員この吹部のことを全て知ってるわけじゃない。
だから、これからもっと、もっともっとみんなでどうしたら良くなるかだとか、団結できる絆を見つけていきたいです。
最後になったけど、私は誰にも辞めて欲しくない。もし本当に辞めるんだったら、正々堂々とみんなの前でいってほしいな。
私は、この先なにがあっても辞めません。
みんなといる時間が宝物だって言えるように引退したいから。




