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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
1年生1人1人の心
154/423

麻由の成績

バタン。

部活が終わり、麻由は「ただいま」を言わずに家に帰ってきた。

「おかえりなさい。麻由」

「あぁ。うん」

「……父さんが麻由を呼んでいたわ。はやく行きなさい」

「帰ってきてるんだ」

麻由の父は、単身赴任で1ヶ月に1回のペースで帰ってくる。

ガチャッ。

「麻由。おかえり」

と、父が麻由に近づき、1枚の紙を突きつけられた。

「これはなんだ?」

それは、2学期の中間テストの成績表だ。

全て70点以上。平均も上回っている。

だが、麻由にとっては震え上がるような点数だった。

「父さんとの約束、覚えてるか?」

「……80点以上じゃなければ、」

と、麻由が俯いた。

「部活を辞めて勉強に専念しなさい」

「……」

「はぁー。お前には結構期待してたんだぞ。麻帆も70点しか取れなかったんだから」

麻帆は、麻由の姉で、現在大学の寮で暮らしている。

「とにかく、お前には勉強しかないんだ。期末テストまであと2週間しかないわけだぞ。明日、先生に言ってしっかり取り組め」

と、麻由の肩を叩き、リビングから出て行こうとした。

「勉強だけじゃない」

震えた小さな言葉は、父の耳に届いていた。

「あたしには、ドラムがある」

と、父がなにかを投げ、麻由の頭にあたった。

バサッ!

そこには、問題集の文字があった。

「ドラムから離れろ。そんなのだったら渚和高校(なぎさわこうこう)にもいけないぞ」

渚和高校、通称渚高は県内でもトップの高校で、姉、麻帆は渚和高校を受験したが失敗に終わってしまったのだ。

「いい加減、だれがここまで育て上げたか考えろ。今日はその問題集全部終わるまで寝させない」

と、父は自分の部屋に戻っていった。

『あたしにだって、行きたい高校はあるのに』

〈ぶーっぶーっ〉

メールが来たが、見たくもなかった。

『明日ミーティングあるのに……』

最悪のタイミングだ。

と、麻由は自分の部屋に戻って問題集を解き始めた。

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