1年生での話題
今回のリーダー会議は、パートリーダー、部長・副部長、1年生リーダーで行われる。
「リーダー会議を始めます」
「「よろしくお願いします」」
凛奈は声が出ないので、ペコっと礼だけして座った。
「えーっと、早速だけど1年生について」
茉莉花1人が前に出て進行させる。
一斉に凛奈の方を向く。
「1年生、パート練の時とかどんなかんじ? 特に経験者のいるパート」
と、奈津が手を挙げた。
「うちらのパート、マリアだけ経験者だけど、前までよく3人で合わせたりしてたけど、今はバラバラ。時間が短いってのもあるけど、ずっと個人練してる」
「他のパートは?」
と、茉莉花がぐるりと見渡した。
「うちのパート、1年2人とも仲悪いけどな」
と、ポソッと頬杖をつきながら呟いたのは蒼だった。
「は? どうゆうことよ」
「いや、だから、あいつらいつもバラバラで行動してたし、喧嘩も前からちょくちょくあったしなぁ」
バンッッッ!
綾乃が机を叩き、立ち上がった。
「そうよ。元をたどればあんたたちのせいよ。
巫愛ちゃんも真紀ちゃんもボーン1年生2人の喧嘩に巻き込まれただけなのに、2人とも苦しくなって部活を休んでる」
いつもおとなしい綾乃が怒っている。
凛奈は唖然とした。
「はぁ? あいつらは相性が悪いだけだろ。しかも俺じゃねーし」
「あんた、そんなこと思ってんの?! あんたそれでもパートリーダー!? あんたたちがちゃんと仲裁してくれていればこっちはこんなことにならなかったのに! 自分のパートのトラブルを他のパートに巻き込まないでくれる!?」
「じゃあ言わせてもらうけど1年生のソロでもホルンパートのソロだろ! もっとちゃんと決めねーと東原も新衣も困るだろーが! お前こそそれでもパートリーダーかよ!」
と、蒼も立ち上がった。
「うるさい! あんたこそ、パートリーダー失格よ! もう風馬と交代すれば!?」
「あーそーですか! 俺がパートリーダー失格ならお前もパートリーダー失格だな! 俺とお前は同レベルだからな! 天野と交代しろよな!」
「なんですって!?」
「ちょ、ちょっと待ちなよ。2人とも。目の前に1年生がいるんだよ」
と、深海が2人を引き止めた。
蒼も綾乃も、ハッとなり、前を見た。
そこには、気まずそうに座っている凛奈がいる。
こんなに揉めている2年生を見たのは初めてだった。
「ご、ごめん凛奈」
「ごめんね……」
2人もやっと落ち着きを取り戻した。
『先輩方は、1年生の事を考えすぎてこんなことに……』
「と、とりあえず、他のパー」
ガラッ!
「ト、は……」
茉莉花が話している途中にドアが開いた。
小林だ。
「こ、ばやし先生……」
「もう会議は終了しろ。こんなことやっても無駄だ」
「……はい……」
綾乃がうなだれた。
「明日、1年生は全員部活に参加するように。もし参加しなかった場合、引きずってでも連れて来い」
と、小林はぐるりと見渡して言った。
「香坂は……、声が出ないんだったな。まぁ、黒板に書いて進行させたらいい」
と、ニコッと笑った。
逆にそれが凛奈をぞわっとさせた。
『明日、なにがあるんだろう……』
と、少し怖くなった。




