経験者であること
放課後、凛奈はマウスピースを洗いに来た。
「待って!」
と、声の聞こえた方を覗くと、マリアが亜利沙を追いかけていた。
「マリア、なにかした? どうして無視するの?」
と、マリアの言葉に一切耳を傾けず、亜利沙はスタスタと逃げている。
「どうした? 声聞こえてきたけど」
と、由紀と美奈、それにノノカが現れた。
「ちょっと、凛奈。隠れてないで出てきな」
ノノカには凛奈がいることがわかっていたようだ。
「はい」
と、おずおずと出てきた。
「んで、どうしたの?」
「え、っとその……」
と、かぁっと亜利沙の顔が赤く染まった。
「喧嘩?」
と、ポソッと由紀が呟いた。
すると、
「ぅ、るさい! あんたたちに関係ないでしょ!」
と、亜利沙が叫んだ。
「あんたのそういうところ、ほんとにムリ! それに、経験者に私の気持ちがわかるわけないよ! あんたは経験者なんだから! 」
と、ホルン2人が駆けつけた。
「ど、どうしたの!?」
と、愛菜も現れた。
「〜〜ッ! あんた、どういうつもりよ! 初心者はソロ吹いたらダメなの!?」
と、愛菜を指差した。
由紀が苦笑いした。
「えー、愛菜、そんなこと言ったの? それはさすがにやばいよ…」
「うるさい」
由紀の言葉を遮り、愛菜は亜利沙を見た。
「誰がそんなこと言った?私はただ大丈夫かなって言っただけだと思うけど?」
「え、ちょっと待って、初心者って、それにソロって、何の話?」
と、巫愛が質問すると、亜利沙は怒り震え上がった。
「なによ! もう経験者なんて大っ嫌い! 自惚れるのもいい加減にしたら!? そもそもなんで巫愛はわざわざ真紀ちゃんにソロ任せたの!? 見せつけるつもり!?」
「え……、もしかして、怒ってる理由って、私たちのソロのこと?」
と、巫愛が尋ねる間、真紀は泣き出してしまった。
「う、ぐっ……。もうやだぁ……」
と、真紀はしゃがみ込んでしまった。
「みんな、もうパート練に戻ろう。真紀ちゃんは顔洗ってきな」
と、ノノカが言った。
「はやく戻ろう」
と、由紀と美奈を連れて行ってしまった。




