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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
1年生1人1人の心
141/423

経験者であること

放課後、凛奈はマウスピースを洗いに来た。

「待って!」

と、声の聞こえた方を覗くと、マリアが亜利沙を追いかけていた。

「マリア、なにかした? どうして無視するの?」

と、マリアの言葉に一切耳を傾けず、亜利沙はスタスタと逃げている。

「どうした? 声聞こえてきたけど」

と、由紀と美奈、それにノノカが現れた。

「ちょっと、凛奈。隠れてないで出てきな」

ノノカには凛奈がいることがわかっていたようだ。

「はい」

と、おずおずと出てきた。

「んで、どうしたの?」

「え、っとその……」

と、かぁっと亜利沙の顔が赤く染まった。

「喧嘩?」

と、ポソッと由紀が呟いた。

すると、

「ぅ、るさい! あんたたちに関係ないでしょ!」

と、亜利沙が叫んだ。

「あんたのそういうところ、ほんとにムリ! それに、経験者(マリア)に私の気持ちがわかるわけないよ! あんたは経験者なんだから! 」

と、ホルン2人が駆けつけた。

「ど、どうしたの!?」

と、愛菜も現れた。

「〜〜ッ! あんた、どういうつもりよ! 初心者はソロ吹いたらダメなの!?」

と、愛菜を指差した。

由紀が苦笑いした。

「えー、愛菜、そんなこと言ったの? それはさすがにやばいよ…」

「うるさい」

由紀の言葉を遮り、愛菜は亜利沙を見た。

「誰がそんなこと言った?私はただ大丈夫かなって言っただけだと思うけど?」

「え、ちょっと待って、初心者って、それにソロって、何の話?」

と、巫愛が質問すると、亜利沙は怒り震え上がった。

「なによ! もう経験者なんて大っ嫌い! 自惚れるのもいい加減にしたら!? そもそもなんで巫愛はわざわざ真紀ちゃんにソロ任せたの!? 見せつけるつもり!?」

「え……、もしかして、怒ってる理由って、私たちのソロのこと?」

と、巫愛が尋ねる間、真紀は泣き出してしまった。

「う、ぐっ……。もうやだぁ……」

と、真紀はしゃがみ込んでしまった。

「みんな、もうパート練に戻ろう。真紀ちゃんは顔洗ってきな」

と、ノノカが言った。

「はやく戻ろう」

と、由紀と美奈を連れて行ってしまった。


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