小林からの呼び出し
137話のちょっとまえの話です。
「香坂! ちょっとこい」
「えっ!? は、はい……」
さっき、ぶつかりそうになったのに、すみませんもなにも言わなかった。
『怒られる、かな……』
と、覚悟した。
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連れてこられたのは、夏のコンクールでソロレッスンをした、あの渡り廊下だった。
「おい、」
「は、い」
「お前、大丈夫か?」
と、両手を凛奈の肩にのせた。
「え、」
「何があったとは聞かない。どうしたんだ?」
凛奈は手をぎゅっと握りしめ、
ふるふると首を振った。
「そうか……。リーダーになってから、お前おかしいぞ。頑張り過ぎるな」
「……はい」
リーダー。その言葉が、凛奈の心を揺るがす元なのだろうか。
「またなにかあったら相談しろ」
と、ポンっと肩を叩いて小林は去って行った。
「あ、香坂ー。ここ借りてもいーか?」
と、風馬と美鈴が楽器を持ってやってきた。
美鈴は頬を膨らませ、不機嫌そうだ。
「はい。どうぞ」
「さんきゅ」
「ありがと」
「よし、美鈴、やるか!」
「は、はい」
と、美鈴は頬を赤くした。
そうだ。美鈴は風馬が好きなのだ。
あまり邪魔をしてはいけない。
と、凛奈は走って去って行った。




