トロンボーンパート
再びパート練の時間になった。
「ねぇ、真紀ちゃんさ、ソロできてんのかな」
ポソッと言ったのは、愛菜だった。
「どういうこと?」
美鈴が聞き返す。
「や、真紀ちゃん上手だけどさ、緊張とかしてあがっちゃったりしたら、」
バンッ!
「ソロに向いてないってこと!?」
美鈴が勢いよく机を叩き、立ち上がった。
「は? そういうわけじゃないよ。なにキレてんのー?」
と、笑いながら愛菜はいった。
「いや、あんたが言ってんの、そうにしか聞こえないよ」
「なにムキになってんのさ」
「ほんっと意味わかんない!」
「ちょちょちょ、お前らやめろって……」
風馬が慌てて止める。
「ほら、愛菜もそういうつもりで言ったんじゃねーし、」
蒼も立ち上がる。
「ソロは経験者が吹けばいいってわけ?! そんなの認めない!」
「誰もそんなこと言ってねーよ!」
愛菜もだんだんムキになってきた。
「お前ら、落ち着けって!」
蒼が机を叩いた。
「あ……」
「美鈴、外いこーぜ。合わせるぞ」
「は、はい!」
風馬が美鈴を連れて去って行った。
「はぁ……」
「すみません」
「あぁ……。俺も強く言いすぎた」
「ほんっとにすみません……」
と、愛菜は深く頭を下げた。




