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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
アンサンブルコンテスト予選
118/423

トラウマ

「凛奈ちゃんさ、特別扱いじゃない?」

「え?」

小5の秋、突然言われた言葉。

「ソロいっぱいもらってさ、アンサンブルにも出られる。5年生なのに、6年生みたいで。さやかたちみたいに下で頑張ってる子もいるんだよ?」

その子の名前はさやか。

さやちゃんは私と美都と一緒にコルネットをやってた。

「え、そうかな」

「そうだよ」

はっきりと言われたその言葉から、妬みが含まれてるなんて、私にはわからなかった。

「もしさやかの方が上手かったら? 凛奈ちゃんは今のさやかとおんなじ気持ちになると思う」

さやちゃんの涙なんて初めて見た。

「特別扱い……。そんなの、されてる方はされたくてされるもんじゃないと思う」

と私は言ってしまった。

「……う、うわぁぁぁあん!」

さやちゃんは泣き崩れた。

オロオロする私の元へ、美都と先輩がやってきた。

「ごめんなさい、ごめんなさい……」

私も涙が溢れた。

先輩が私の背中をさすってくれる。

怖くて、震えて、何もできなかった。


さやちゃんは、二度と練習に参加することなく半年後に転校してしまった。

葉月市ではない、遠い遠い町へと引っ越した。


それから私は、自分の意見を言えなくなってしまった。

目が覚めた時、外は暗かった。

『……あ、久しぶりに見た。さやちゃんの夢』

まだぼーっとしていた意識も、ハッとなった。

『わぁぁぁぁあ!』

制服のまま寝てしまったことに後悔している。

パタパタとスカートの皺を伸ばし、ため息をついた。

「そうだ、ご飯」

今日、この時間にコンビニに行くとマイがいるかもしれない。

「……やっぱいいや」

と、下へ降りて冷蔵庫を覗いた。

「よし、なにか簡単なもの作ろう」

朝緋はまだ帰ってきていなかった。



-----------

次の日。

「あ」

「あ」

朝練で加奈子とばっちり会ってしまった。

「お、おはよ、う……」

「おはよ」

彼女はニコッとしてから練習場所へ向かった。

なんだか胸がツキツキする。

「ねぇ、凛奈ちゃん、」

聖菜と加奈子が、練習中に凛奈を呼び出した。

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