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決断
「いいか、よく聞け」
「う、はい」
「誰をコンテストに出すか、決断しにくい状況だ」
「え、」
「お前は、やっぱり入り込むことができる。そして何より、1番絶望感を表現できている。
間宮もだ。あいつは小学校の頃にやったことがあるし、音も安定している。濱田と魚野川も合わせやすいと思う。
それに、高野も全体的に音が良くなっている。
あいつも候補から離しにくい」
ただ、と小林は続けた。
「高野はまだソロをしたことがない。
初めてのソロがコンテストだと頭が真っ白になってしまうかもしれない。間宮のフリューゲルはお前よりもいい音がなっている。だけど、あいつはまだ転校してきて1ヶ月半だ。まわりの人間がどう思うかもお前にも想像つくだろう?」
「……はい」
それは、小林は遠回しに聖菜をコンテストに出せないと言っているようだ。
「お前に、頼んでもいいか?」
「……はい。はい! 聖菜と、加奈子の分まで頑張ります!」
「そうか」
と、小林は笑った。




