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仲間として
「凛奈ちゃっ……、凛奈ちゃんなの?」
聖菜が泣きながら叫ぶ。
「ねぇ、いるなら返事して」
「う、うん。いるよ」
と、扉を開けて返事した。
「え、と、大丈夫?」
またこんな言葉が出てくる。
本当に情けない。
仲間としてではなく、今はリーダーとしてそう思った。
「で、どうしたの」
と改めて聞く。
すると聖菜は俯き、
「私、やっぱフリューゲル吹けないよ」
と、か細い声で言った。
凛奈は聞いた。
「なんでそんなこと言うの?」
「理由は、言えない。だけど吹きたくない。吹けない」
と、聖菜はトランペットを取ろうと手を伸ばした。
しかし、凛奈はその手を掴んだ。
「どうして? 私たち仲間だよ? 教えて、とは言わない。ただ、なにか困ってるなら相談して欲しいの」
「……長くなるよ」
「それでもいい」
「呆れるかも」
「そんなことない」
「時間の無駄かも」
「それでも私は聞くよ。だって、友達だもん」
と言うと、聖菜は、
「わかった。話す」
と言って座った。




