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棄権
「先生、あの、」
「なんだ?」
と、聖菜はバッと楽譜を小林に向けた。
「この楽譜、お返しします。私、棄権します」
「え!?」
凛奈は思わず声を上げた。
「私、フリューゲル吹けません」
その声は、震えていた。
だが、小林は受け取ろうとしない。
「間宮。今はそういう事はできない。お前が吹きたくない理由を俺が探るわけにもいかない。
それに何より、決めるのは俺だ。お前じゃない。
だから、その楽譜は持ってろ」
小林は優しい口調で言った。
「……はい」
と、聖菜は楽譜とともに手を下ろした。
「じゃあ、もう戻っていいぞ」
「「ありがとうございました」」
と言って、4人は戻った。
「ねぇ、なんの話をしてたの?」
と、早苗は尋ねた。
「またあとで話すよ」
と、杏は笑顔を見せた。




