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悪口契約で僕が神様になった件  作者: 千波幸剣(せんばこうけん)
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悪口契約で僕が神様になった件④

悪魔が大物クラスの封印を解こうとしているのを翔が阻止しようとしている場面に移る。


「お前は一体何者だ」


翔の目の前には5体の悪魔が立ちふさがっている。


「俺の名前が知りたいのか。そうか、そうか、そんなに気になるか」


「それほどまで弱いのにいつまで抵抗するなのだ」


「俺はまだ負けたとは思っていない」


「お前自分の姿を見てみろ。敗者の格好そのものだ。いい加減、あの方の復活の邪魔をするな」


「それがそういうわけにも行かないんだな。こういうキャラを人間界ではヒーローという」


「お前が英雄だと。おもしろい。こうなればこっちも容赦はしない。灰になり、消え去らないと分からないようだから本気で潰すしかないようだしな」


「雑魚の吐くセリフをようやく口に出してくれたか。こっちも本気で行くぜ」


そういうと、翔は自分の首に掛けているペンダントを右手で強く握り締めた。


「お前何をする気だ」


「さて、何でしょう。答えは5秒後に分かるから待っていろ」


それから少しの間があったが何も起きることはなかった。


「お前実は何の力も持っていないのか?」


「俺には英雄の力がある」


自信満々に翔は答えた。


「いい加減にしろ。お前みたいな雑魚に構っている暇はない」


「ここまで辿り着くのに力を使いすぎてしまったようだ」


「減らず口だけは変わらないようだが、最後に言い残すことはあるか。あっても俺らの間での笑い話になるだけだけどなあ」


悪魔の群れの一部がさらに近づいてきていた。


「しかしつくづく運のない人間だな。お前がさっき倒した仲間の兄弟がお前を倒したいと群れを連れてきたぞ」


「数の有利に負けるとはこの翔さまも焼きが回ってしまったということか」


それでも翔は格好つけたセリフを言っている。


その群れの横を眩しい光が通り抜けると同時に群れは消えてしまった。


「勇人がピンチだと思って来て見たらあんたが虐められていたとは思ったとおりの展開過ぎて笑うに笑えないわ」


その光の筋は舞子だった。


「ヒーローを助けるのはヒロインだと思ってたぜ。愛しい俺が消えてしまったら毎日枕を濡らして生きた心地がしないだろうしな」


舞子が翔の頭を叩く。


「すいません女王さま」


「設定が変わっているし、あんたが消えてしまった方が私は枕を高くして眠れるけど間違って来てしまったからには仕事はしておかないといけないしね」


「いくら惚れている女でもそこまで言われるときついんですけど」


「あんたの気持ちに答えている暇はこっちはないんだけど、あんたも何とかしなさい」


そういっている間に舞子は5体の悪魔を倒してしまった。


「何とかしなさいと言いましても、すでに倒す相手すらいませんが」


「あっ、ごめんごめん。今バイトの休憩だから、また戻るわ」


光の筋が出来、また舞子は消えていった。


「相変わらず強いなあ。今回は本当に人生が終わるかと思った」


ふぅーと大きな息を吐いて、翔は倒れこんだ。


しかし、地中にあった封印の扉は開こうとしていた。


「そのまま眠ってしまっていたか。そういえば封印はどうなった」


翔が目を覚まして、立ち上がり、地中の扉を見るとすでに扉は開いていた。


「しまった。俺の担当地域が危なくなる」


翔の血の気が引いている。


そこへ見慣れない人影が見えてきた。


「なるほど、そういうことだったんですね。それなら自分が話しに行ってきます。それまで封印されていただけますか?」


「お前のようなやつに会うのは500年ぶりだが少しの間なら待つ」


「こちらこそありがとうございます。話し合いが終わったらまた封印を解きに来ますのでお待ちください」


「私の時間は無限にある。良い返事を待っている」


「分かりました」


目の前の人影は夕日に包まれていて翔の目にはしっかりと肉眼で捉えられない。


「これでよしと」


気付けば、封印の扉は前回よりも頑丈な力で閉まっているように感じる。


しかし、それは翔の直感でしかなかった事が後で分かることになる。


「あなたは一体」


翔の口から思わず言葉が漏れた。


「ひょっとして勘違い男さんですか?」


勇人が返事を返した。


「勘違い男って誰のことでしょう?」


「舞子がこの辺りをうろついていると言っていたからそうかなと」


「お前、舞子の男か」


急に翔の声のトーンが変わった。


「どう考えても違うし。幼馴染の怪力女を誰好んで好きになるか」


勇人が答える。


「なるほど、お前が噂のマスタークラスか」


「いや、マスタークラスとか良く分からないけど、現在そういう状況にあるのは確かな真実だからしょうがない」


「舞子の片思いというのは本当のようだな。しかし、お前のどこがいいのか、容姿も雰囲気も下の中だな」


「俺は別にイケメンを目指していないし、初めて中級クラスの悪魔の方と話しておもしろい経験をさせてもらった」


「俺が力尽きて倒れている間に、お前、ひょっとして封印を解いたのか」


「倒れていたんだ。倒されてしまったのかと思って気にしてなかったけど、封印を解いたのは俺じゃないよ」


「ムムムッ。まあ信じてやるよ」


「舞子の言ったとおりのタイプだ。それじゃあ舞子に好かれないはずだ」


「それは否定できない。しかも、あいつも神様だから神の力で好きにもさせれないというデメリットが」


「うわっ、最低な人間だ。舞子の方がまだ力の使い方がマシだな」


「自分の人生を神のせいにするやつよりはマシだ」


「何でその事を知っているんだ?」


「舞子から聞いたからな、マスターさん」


「舞子のやつ、勘違い男に話さなくても」


「それより、どうやってその封印されていたこの地域の主を元に戻した」


「いや、世間話をしていただけだけど、まさかこの封印の主とは思わなかったから」


「いやいや、ありえん」


「あと愚痴を聞いたよ。元々はこの地域の守り神だったらしいけど、新しい支配者が自分の信じる神様と社をこの近くに建てたから今の状況になったらしい」


「お前は悪魔が怖くないのかよ」


「悪魔についてもっと勉強した方がいいよ。先入観で物事を判断していたらこの仕事はしないほうがいいと思う」


「言わせておけば。俺がどれだけの悪魔を退治してきたのか舞子から聞いてないのか」


「聞いてないし、聞きたくも無い。あなたとは悪魔に対しての価値観が合わないみたいですね」


「お前こそ、マスタークラスに選ばれたからって、大きな顔をするな」


「それが命の恩人に対していう言葉だと思うとこっちもため息しか出ませんが」


「命の恩人?」


「さっきの主は敵だ敵だと認識して、自分の封印を解こうとしていた仲間を退治してきたあなたと舞子を消し去ろうとしていたんだけど、どうにかやめてもらった」


「お前悪魔に助けてもらうとか、やめてもらうとか、頭おかしいんじゃないの」


「その頭のおかしさであなたがそこに存在している。それが今の現実で現時点での真実」


「そこまでして助かりたいとは思ってない。悪魔に助けてもらわれるくらいなら消えてしまったほうがよかった」


「はぁ、命の有難みを分からないやつがどうしてこの仕事をしているのか」


「それは俺のやりたかった仕事だから。子供の頃からヒーローに憧れていたから」


「なるほど。それは悪くはないね」


「お前に上から目線で言われたくない」


「ただ、ヒーローの弱さとか悩みとか正義とか深く考えたことはあるの?」


「そんなものはない。正義と悪、これが判断のすべてだ」


「ヒーローや正義の味方は人間だからそういう考えも間違えじゃないと思う。でも、神様ってそれだけの考えでいいのかな?」


「お前と討論するためにここに来たわけじゃないから、俺はそろそろ帰る。まあ礼は言っとく」


そういうと翔は消えていった。


「礼は言っとくって礼を言わずに消えていくって舞子の言ってた想像どおりのやつだな。あとは神社の主に会いに行かないと」


勇人はそこから近い神社へと足を走らせた。


「あの小僧、本当に俺との約束を守る気だな。封印もせずに俺の話を信じてくれたのか。おもしろい神が出てきたものだ。わしも一眠りさせていただこう。決裂のときには人暴れする準備もできるからな」


声の主は封印されたはずの悪魔だった。


しかし、破れたお札をまた貼りなおしたところで封印できていないことは勇人自身が良く分かっていることだった。


それでも、勇人は敢えてその状態のままで封印したからと翔に認識させるために言ったのだった。


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