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悪口契約で僕が神様になった件  作者: 千波幸剣(せんばこうけん)
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悪口契約で僕が神様になった件③

舞子は勇人の家に到着した。


「ピンポーン、ピンポーン」


玄関のボタンを押す。


「ピポ、ピポ、ピポ、ピポ、ピポ、ピポ、ピポ、ピポ、ピポ、ピポ」


舞子はボタンを連射している。


「うるさい、ちょっと待ってろ」


二階の窓が開き、勇人が顔を出す。


「この時間は勇人しかいないの分かっているから嫌がらせをしてみたんだけど、リズム感養われるからもう少し出なくても良かったのに」


澄ました顔をして舞子が答える。


「あのなあ、うちのインターホンはお前のリズム感を鍛える道具ではない」


そういうと二階の窓を閉めて、勇人が降りてくる。


玄関の鍵が開くと、勇人が出てきた。


「それでご用件は何でしょうか、舞子様」


すでに疲れ切った表情で舞子の方を見る。


「神様の仕事は進んでいるかなと思って。それよりも何でそんな疲れた顔してるの?」


舞子は不思議な顔で勇人を見る。


「神様の仕事ってさあ、奥が深いというか、考えれば考えるだけ、何をすればいいのか」


「そんなに深く悩まなくても、最初は困っている人を助けれるところから始めるとかすればいいと思うんだけど」


「その困っている人を助けたとする。それでもいずれその助けた人間が悪人になる可能性もあるわけでそれに神が関わっていたらあとで責任問われない?」


「出た、ここ最近の勇人だ。考えすぎ、自信なさすぎ、怖がりすぎ。逆にそういう人間を世の中に出すところから始めてみれば」


「引きこもり体質のような視線で俺を見るな。寧ろ引きこもりの人もそれぞれに抱えている問題や悩みは一緒ではないと思うぞ」


「現在の引きこもりの人のほうが勇人よりはコミュ力は高いと思うけどね」


「話が違う方向に言っているぞ」


「いえ、違いません。マスタークラスに選ばれたのにトップがこんな調子じゃ下はどうすればいいのか」


「いや、勝手に選ばれただけで俺のせいじゃないし」


「最初は嬉しかったんだけどなあ。成果報告があの後1つも無いので元地域担当の私が面接に伺いました」


「神様の家庭訪問っておかしいだろう」


「言っておくけど、勇人、あなたは全世界の神と悪魔からすでに注目されている存在になっているんだから急がないとそろそろ悪魔側の挨拶もあるかもよ」


「成果報告も無いのにどうしてそんなことに」


「マスタークラスの存在なんて本当に珍しいことだから広報機関が宣伝して回っているみたいだよ」


「神様にもそんな機関があるのか。というより、著作権とか自己承認なしでそんなことをされているとは。道理でここ最近、訪問客が多いわけだ」


「勇人今何て言った?」


舞子が聞き返す。


「訪問客が多いんだよ。それも疲労の原因になっている」


「それって神様だけじゃないよね」


「ああ、悪魔側とも何度も議論を重ねていたよ」


「敵と議論って何なのよ」


「自分なりに考えて辿り着いた答えは信仰が薄くなっているのは前俺が言った言葉じゃないけど、無神論者が多くなっている。でもその原因を作り出しているのはこの人間社会の構図というところまで結論からいうと導き出せた。でも、悪魔側も今の人間に対しては嫌悪している部分もあるらしい」


「悪魔がそんなことを言うわけないでしょう」


「悪魔も元神様だぞ。それに人間の政権交代みたいな神様同士の争いが元で闇に堕ちた神様も多いだろう。その原因は何なのか分かるか?」


「いや、そこまでは勉不足かも」


「日本ってさあ、宗教以前の神様って自然神、いや日本じゃなく、世界どこでも同じだとは思うけどさあ。その頃は信仰じゃなくて、神考に沿って人間も生活していたんじゃないかなと思ったわけ」


「それってどういうこと?」


「自分が生きている限りはどこで何をしていようがどの場所にも神様が存在していて、そういう考え方や環境の中で生きていたから自然を大事にして、自分の家族や使う道具や家畜も大切にしていたんだと思う」


「それで」


「周りをまず大事にするということは自分が一番ではないし、自分の思い通りになんて発想は無かったんだと思う」


「そうだろうね」


「今現在の自分達の暮らしはどうでしょうか、舞子さん」


「仕事や学校が別にしても、それ以外は自分のスケジュールで動いて生きているかもね」


「そんなことじゃなくて、どんなときでも神様に見られているっていう意識はないよね」


「私自身もそれはないわ」


「もっといえば、神様の存在だけじゃなく、悪魔の存在すらないよね」


「そう考えればそうかもしれない」


「それともしもこの世界から神も悪魔も消えてしまったらこの世界も消えたりするのか?」


「消えることはないけど、そうなる前に人間達がリセットされることになる」


「どの宗教にもある世界終末論は神様が刷り込んだ情報ということ?」


「そうそう、でもね、昔の人たちなら恐ろしいはずの終末論も今の時代の人は信じないんだよね。滅ぶときに嘆いてからじゃ遅いんだけどね、馬鹿ばっかり」


「でも、神様の仕事はその馬鹿を更正させないといけないという事だよね」


「確かに悪魔も呆れているくらいだから、神様に至ってはさらに仕事のやりがいよりも諦めてしまって姿を現さない神様もいるからね」


「なるほど。何で俺がマスタークラスなのか何となく分かってきた気がする」


「私も」


「でも、やりたくない仕事だな。それに人間社会においては差別だな」


「そうだね。神考を信じている人だけを災害から救い続けてカリスマ的な人間を作って、人間社会にもう一度初期宗教時代の考え方を意識させるとか、そういうことだよね」


「神様自らが天変地異を起こして人間を怖がらせて、同時に神の降臨をさせるって、現在においては一時的な効果しかないよね」


「そこが問題らしい」


「だから手の内ようが無いんだよな」


「昔からの言い伝えや伝説も信じていない人間が多すぎるからね」


「悪魔も言っていたよ。姿を見せても、怖がらないこともあるって。それで目の前で命を奪ったら、ようやくこの悪魔って言われて、神様助けてくださいって言ってるのを見るとその場にいる人間を全員地獄に落としてやろうかと思うけど、そうなると自分の存在に気付かれて、信じられてもいない神様が自分を退治にくるからやりきれないって」


「そこまで愚痴を聞くってある意味マスタークラスだわ」


「全ての言葉を信じているわけじゃないけど、つい最近まで平凡な人間だった自分にはその景色が想像ついて」


「悪魔の囁きの全てを信じていないとこもマスタークラスだね。でも、私も分かる。良い時だけ神頼みや神さまの助けを呼ぶご都合主義の人間に対しては私はスルーしているから。本当は神様の存在を示すべきなんだろうけどそんな人間に対して助ける義務も理由もないから」


「さすが舞子だ」


「それにそういう人間に限って、悪魔に助けてもらってたり、悪魔の力を利用しているから私たちじゃ手が出せないのよね」


「それは手が出せるんじゃないの」


「心の中がまだ神様よりも悪魔寄りのままで神様を呼んでいるから私たちの力が通じない」


「なるほど、悪魔よりも悪魔ってことか」


「うん、悪魔よりも心が汚れているからね」


「悪魔についてもいろいろ調べたけど、それぞれにいろいろな役割や能力が違うみたいだね」


「暴力的や残虐的な悪魔からほのぼのした無害に近いものも存在するから一概に言えないね」


「神様もそうだよね。人間に対して有無を言わさず、天罰を落とす神様も存在するね」


「それで勇人が一番最初にする仕事は何にするか決めたの」


「それは決めた。まず神様巡りをしてみようかと。あと悪魔巡りも」


「いきなりマスタークラスの権限を行使するわけね」


「というわけで舞子はこの地域担当に再び再任されるということでよろしく」


「そうなると思った」


「でも、もうすぐ残虐な悪魔がこの近くで復活しようとしているらしくて、まずその退治に行かないと行けないらしい」


「それ誰からの指示?」


「誰かは知らないけど多分上からの指示だと思う。お前の思う世界を描きたければ最初の一歩はそこからだと夢の中のおじさんが言ってたから」


「夢の中のおじさん?」


「名前言わなかったからそういうしかない」


「それ多分、いや何でもない」


舞子が口を閉じる。


(ま、まさかね)


「というわけで舞子も一緒に行こう」


「いや、遠慮させていただきます、この後バイト行かないといけないから」


「俺はバイト料減るのにバイト休んでいくのに」


「買いたいものがあるから休むわけにはいかないのよ。ただしどうしてもピンチの時は勝手に助けにいくから」


「その辺りが神様だな」


「あと、その地域は勘違い男が見回っているからもしあったら合流するといいよ。少しは戦力になるとおもう」


「舞子の知り合い?」


「まあそんなものかな」


「分かった。ということは復活しそうな悪魔のことも詳しいということだな」


「詳しいかどうか分からないけど、復活させないように頑張っているみたい」


「何で」


「多分、逆に自分がやられるからじゃないかな」


「なるほど」


勇人はまだ会っていない翔に対しての期待の表情が薄れた。


「それじゃ、私、バイトに行くわ。勇人、考えるよりぶつかってみるといいよ、もしその悪魔が復活しても勇人なら大丈夫かも」


謎めいた言葉を残し、舞子は消えた。


「あいつ、バイト行くのに神様の力使っていいのか。とりあえず今日は場所を確認しにいってみるか」


こうして勇人も翔のいる地域に向っていった。


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