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悪口契約で僕が神様になった件  作者: 千波幸剣(せんばこうけん)
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悪口契約で僕が神様になった件①

悪口契約で僕が神様になった件


僕は新木勇人18歳。

現在実家暮らしのフリーター。

趣味はこれと言ってない。

そんなわけで当たり前のように彼女といえる存在もいない。

いや、居なくもないかな。

2つ年下の幼馴染の舞子はこんな何もない僕のことをそれでも大好きだといってくれてるがその答えにまだ返事を出せていない。

何故ならこんな僕だからだ。

ごく普通の日常。

繰り返しの毎日。

不満はないが満足もしない人生。

こんな人間を作り出したのは僕自身。

いや、待てよ、こんな世界を作り出したのは僕じゃない。

神様だ。

神様は何でこの不平等な世界を変えてくれないのか

神様は何でこの不平等な世界をそのままにしてるのか

神様は何でこの不平等な世界を放り投げたまま姿を現さない

神様は何でこの不平等な世界の仕組みを壊してくれないのか

神様は何でこの不平等な世界の中で生きて死んでいく人間たちを見過ごしてるのか

神様は存在しないからか

神様は自分の手を汚したくないからか

神様はもう人間というものを受け入れていないのかもしれない

まあ神様の悪口を言ったって聞こえやしないか

聞こえたとしても人間の一生なんて気付けば終わりを迎えていると言うし。

ちっぽけな自分の存在なんて気にも留めていないだろう。

俺が神様ならこんな世界すぐに変えてやるのに。

「本当だな」

「今何か聞こえた気がしたが気のせいだよな」

「お前が本当にこの世界をすぐに変えてくれるのだな」

「神様になればこんな世界すぐに変えれるに決まってんだろう」

「本当だな」

「誰だか知らないが楽勝だ」

「それならお前が今日から神様だ」

「姿形も見えない人に何でそんなことを言われなきゃいけないんだ」

「それは私が神だからだ」

「いない、いない、いるわけがない」

「お前のような人間を探していたのだ」

「俺はただこの世の中のすべての原因を神様の所為にしただけだけど」

「この時代はそういう人間が必要なのだ」

「いやいや。神様ならこれだけ悪口を言われたら怒るだろう」

「それは人間側の想像でしかない」

「それなら神様は今の時代をどう思ってるの」

「それは口には出来んが悪魔との戦いが激しくこの世界の面倒を見れる時間が減っているのは確かだ」

「神様がいい訳をするとはこの世界はやっぱり終わっている」

「いい訳ではない。お前たち人間の見えないところで戦いは続いている」

「その証拠がありますか」

「お前たち人類には見えない戦いだからそう言われるとない」

「それならどうやって証明できますか」

「さまざまな天災を防いでいるといっても信じてもらえんだろうな」

「いやここ最近、天災の数が増加していますが」

「お前たちもそう感じてるか」

「そう感じているも何もそのまんまじゃないですか」

「お前は悪魔のことについて何か知っているか」

「悪魔も元々は神様なんですよね」

「それを知っていると話は早いと思うのだが」

「何となくですが神も悪魔も力に差がないということですか」

「そうではないんだが最近お前のように神様を否定している人間が増えている」

「こういう時代ですからそれは仕方ないんじゃないんですか」

「否定だけでなく無神論の人間も多くなっている」

「自分も今こうして直接会話をするまではそれに近い人間でしたが」

「今の話と今の時代を信仰という言葉に重ねると神と悪魔のどちらの力が強い印象を受けるか」

「素直に言って悪魔側の方ですね」

「だから神様に願う人間がいても悪魔との戦いで手間取っていて信仰の声に耳を傾けてはいてもその声に対しての仕事が出来ない状態になっているのだ」

「なるほどと納得してしまうところでしたが、神様がそれじゃダメでしょう」

「その通りだ」

「でも、そういう状況なら神様側の気持ちも分かりましたがそれを僕が知ったところで何にも出来ませんが」

「私の変わりにこの辺り周辺の神様の仕事を少しの間してくれないか」

「いや、無理無理。よりによって無色透明無力無能無知無関心なこの僕にそんな大それた仕事を押し付け、いや頼まれても力にも神様にもなれません」

「いや見込みがあると思って頼んでいるのだ」

「褒めても無理なものは無理です」

「神様に褒められるということは見込みがあるということだぞ」

「なんだか調子が狂うけど神様だから嘘はつけないんですよね」

「神様だからな」

「それはそれで少し置いときますがどうして声しかきこえないのですか」

「神様といえば、神の声とか天の声とかそういう仕様が語り継がれている」

「神様が仕様とか」

「私も実は今人間界に降りてきておるので人間の言葉を少し使えるようになった」

「そういうことじゃなくて、自分の中の神様のイメージが壊れていってますが」

「あと一つ、こういうしゃべり方をしているが実は女性の神である」

「いやいや、しゃべり方からしてどうイメージしてもおじいちゃんでしょ」

「それも昔からの神仕様なので規則を守っている」

「姿は女性、声はおじいちゃんなんですか」

「声は神仕様の変換を利用してしゃべっておる」

「何か想像していた神様と違う」

「今はそういうことを話しているのではない」

「それで姿は見えないんですか」

「この時代の羽織るものに比べると露出が多いので恥ずかしいというのもある」

「神様が恥ずかしがるとはこの世も末だ」

「うるさいわね。いい加減に私の言うことを聞きなさい」

「うわっ。じじいの声で女性のしゃべり方に変化した」

「もういい。決めました。あなたは強制的に神様にします」

「本人の承諾を得ていないのに神様にあるまじき言動を聞きましたが他の神様には聞こえていないのかよ」

「もちろん聞こえていません。ここは私の担当なので他に聞こえるはずはありませえん」

「神様がそういうことでよろしいのでしょうか」

「寧ろいつまでも神様に逆らっているあなたの身の安全が保証できませんが」

「神様が脅迫するんですか」

「そうじゃなくて後ろを御覧なさい」

「ええっ」

勇人が後ろを振り返ると見えるはずのない悪魔の集団がこちらを睨んでいた。

「神様にならないということはあの物たちに飲み込まれてしまうということです」

「見えないものが何故見えてるんだ」

「新木勇人あなたはすでに神と話をしているということは悪魔にとっては敵と認識されて当然の存在になったということなのです」

「確かに悪魔の仕事も味方にもなりたくはないのでここは一先ずは仕事を受け入れることにしますので助けてください」

「やっと素直になりましたね。それでいいのです」

「あなたに脅されると思いましたがそうじゃなかったので信じます」

「分かればいいのです。分かれば」

勇人にはこの女性の神様の表情は見えていないが笑ったように感じた。

「あの」

「何か」

「今笑っていませんでしたか」

「そんなことはしていませんよ。喜びを表現したまでです」

「そうですか」

「それではあなたにこれを与えます」

「これは」

「これは神様として認証された際に配布される特殊なネックレスです」

「特殊ということはこのネックレスに何か秘められた力があるんですか」

「それがあなた次第です」

「もっと詳しく教えてくれないと神様になれませんが」

「そんなことはないでしょう。あなたは自分が神様になったらすぐのこの世界を変えてやると言っていましたよね」

「それは万能の神様の力を持ったらの話で」

「今あなた、万能の力を持っていますよ」

「そんな訳は」

「あの悪魔を消えるように想像してみなさい」

「まさかなあ」

目の前にいる悪魔の集団を消えるように想像してみた。

「消えた」

「大した想像力の持ち主ね。でも、その力を神様が悪と認証したときにはあなたの命ははかなく消え去るので注意することね」

「ええっ、そんな話このネックレスを渡す前にすることだろう。神様の癖に卑怯だぞ」

「卑怯も何も神様の悪口ばかり言っていた少年が何を言うのかな」

「それは」

「ということであなたの発言も却下です」

「分かりました」

「素直でよろしい」

「おおーっ、確かに露出の高いお召し物で」

「あなた、そういうために使う力ではないのですよ」

「しかし、消え去らないということは邪念がないということですよね」

「邪念があるとかないとかそういうことではなくて、神様の力の使い方が間違っています」

「なるほど。それでは今の時代のものに」

「そういうことじゃなくて。まあセンスは悪くはないけど」

「ところで今更ですがあなたのお名前は」

「神崎舞子です」

「いや冗談はいいので」

「冗談ではないです」

「舞子なはずない」

「これでどうかしら」

「本当に本当なのか」

「勇人気付かないから少し大人びた舞子で登場してみました」

「いや、そういうことじゃなく」

「エヘヘヘッ」

「笑っている場合か。それよりもお前本当に神様やってるのか」

「うん、そうだよ」

「まあそれはいいとして何で俺を選んだ」

「勇人だから」

「それだけか」

「うん、それだけ」

「もっと何かないのか。名前のごとく勇ましいとかいざと言う時頼りになる人間だとか色々と神様になる人間というのは理由があるだろう」

「ない。だって自分で言ってたし」

「俺何か言ったか」

「自分は無色透明無力無能無知無関心な人間だって」

「あれはだな、神様になるような人間ではないと直談判しないと神様になってしまいそうな気がしたから本当の事を言ったまでだ」

「そうそれが大事」

「それが大事って」

「嘘をつくよりも自分の本心を悪口で言ってしまえるほうが人間としては正しい」

「でもそんなことばっかりしてたら嫌われるけどな」

「本心でぶつかり合うことを避けて影で文句や噂を言う人間は最低。でもそんな人間がこの時代では上手に人生を渡って言ってるのよね。ばれたらそこから逃げて別の場所へ移動していくからそういう人たちは。残った人たちの傷跡も考えずに自己中心的な馬鹿が多い」

「神様が馬鹿と言ってもいいのか」

「ごめん。馬や鹿に悪かったわ」

「そっちか」

「勇人はいつも嫌われる方」

「だな。でも変われないから」

「だからあんまり人と仲良くすることをしなくなった」

「嫌われることは慣れないからなあ。自然と人付き合いを控えるようにはなったと思う」

「知ってた。でも、勇人のは言葉はきついけど本当のことだから、みんな腹が立つんだと思う。冗談で流せてしまえないくらいなら口にしなければいいのに」

「だよな。それでも我慢できなくてつい口が出てしまうから」

「言われた本人も反論するとか反省するとかすればいいのにそこではしなかったよね。ひどいとかいって泣き出すやつもいたけど、それに答えを返すことはなかった」

「派閥じゃないけどその後はいつも俺が仲間はずれになってたけどな」

「そして、真実が分かる頃には張本人は消え、お互いの仲も戻れない」

「原因を作ったのは俺だからしょうがない」

「そういう人間だから私は勇人が好き」

「どこからそういう言葉が出てくるのか分からないが今そういう話ではないと思うが」

「そうだった。今の言葉はスルーしといて」

「愛の告白だと思ったけど、そこスルーでいいのかよ」

「それで今の状況を鑑みて神様に指名することに決めたの」

「鑑みてって、舞子が賢い神様に見えてきた俺は頭がおかしくなってる」

「なってない」

舞子は両手でおもいっきり勇人の頬を引っ張る。

「痛い痛い。まいりました。ごめんなさい。舞子様。女神様」

「それでよろしい」

「ところで神様って何をすればよろしいので」

「よくぞ聞いてくれました」

「それで」

「神様をすればいいのです」

「はぁ。具体的には」

「具体的には神様の仕事をすればいいのです」

「その仕事とは」

「それは自分が神様の仕事と思うことをすればいいのです」

「もし、私用で神様の力を使おうとしたらどうなる」

「神様なのでそれはありです。さっき私も悪魔の集団を作りましたから」

「あの」

「はい、どうぞ」

「さらっと流しましたが凄い発言をされたと思うのですが」

「いえ特には」

「そうですか」

「それにもしも本物の悪魔に集団で襲われそうになったらあんな会話をしている場合でもなく瞬殺で勇人は殺されていたし」

「俺だけと言うのが納得いかない」

「私は増援を呼ぶ為に素直に退却するので」

「逃げるのですか?」

「増援を呼ぶ為にです」

「ですよね」

「です」

「はい女神様質問です」

「はいそこの新人さんどうぞ」

「その間僕はどうなってしまうのでしょうか」

「それは新人さん次第ではないでしょうか」

「最悪の展開はどのようになると思われますか?」

「そうですね。体中抉り出され貪り食べられるのではないでしょうか」

「一番いい展開は」

「やっぱり地獄に連行され、同様のことをされる可能性があります。でも悪魔により嗜好は違いますので方法は運任せになるかと思われます」

「すいません。神様を止めさせていただいても宜しいでしょうか」

「もうそのネックレスを着けていますので最低1年は無理です。私自身まだ中堅クラスの身分なので最低2年は覚悟していただかないといけません」

「スマホの縛り契約か」

「そのようなものです」

「はぁ。それから今知ったのですが中堅クラスということは神様にも上下関係があるのですか。伝説上では一応あるのは知っています」

「さすがRPGばかり子供の時からやっていただけのことはあります」

「ありがとうございます」

「それで新人とは」

「その名の通り新人です」

「クラス分けはどのようになってますか」

「よくぞ聞いてくれました勇人くん」

「いや人間界では俺のが年上だから」

「神様では新人のあなたがため口を言える身分ではない私ですが幼馴染なので特別に許しましょう」

「それはありがとうございます」

「簡単に説明すれば7階級、階級の中にそれぞれ3階級あり、合計21階級となっております」

「ということはなりたての自分は1階級か。助かった新人だけに誰か助けてくれる指導役がつくと言う展開だな(願)」

「その願いも空しくあなたは何と」

「何と」

「おめでとう21階級目に当たるマスタークラスに当選されました」

「すいません。福引で1等が当たるのとは違うと思うのですが」

「これは正式な認可が下りてるのよ」

「突然話し方を変えるな」

「ネックレスが等級を与えてくれるのよ」

「特殊なネックレスって等級を判断する代物だったのかよ」

「その通り」

「突然今日から万能の力を手に入れて神様の中でも最高階級の新人さんになりましたっていうことでしょうか?」

「最前線で悪魔と戦う権利を獲得しました」

「戦わないし」

「戦わないの」

「もちろん」

「そういうと思った」

「悪魔も元々は神様だったんだよね」

「そうだけど」

「この世界を変えようと思ったら神様と悪魔が手を繋げるような状況にすればいいんだよね」

「難しいとは思うけど、そういうことになるかな」

「実際今神様と悪魔の対比はどうなっているの」

「9:1ぐらいかな」

「それなら楽勝ということか」

「9は悪魔の方ね。1が神々の方」

「はぁ」

「舞子さん。今21階級についている神様は何名さまでしょうか?」

「勇人さんお1人になります」

「そういうことか。おかしいと思った」

「いやおかしくないよ。このネックレスは神様の数の問題ではなく階級を判断するから状況や理由で21階級になることはないのよ」

「こういう状況で新人が21階級についたと言うことは他の神様からすると良くは思わない人もいるよね」

「そこが人間とは違うかな。人ならそうかもしれないけど、神様の場合はそういうことは思わない。寧ろ、人間の中に21階級に選ばれるものが紛れ込んでいたことが神様にとってはとても嬉しいことだからね。こんな世の中でも捨てたモンじゃないと喜んでいるよ」

「そんなもんなのか。そこはさすが神様だな」

「勇人の大きな目標は分かったとしてまずは世の中の信仰心を上げていかないと」

「対比の差も戦いだけでなくそういう理由があるということか」

「さっきも言ったけどそういうこと」

「具体的には自分自身で考えろと」

「正解です。それでは私は別の仕事があるから消えるね」

「舞子仕事ってお前アルバイトの方か。両立って大変そうだな」

とりあえず勇人が調べてみたのがネット検索だった。

「神様の仕事っと」

検索に掛かるのは仕事のやり方と神様に願いを叶えてもらう為の方法など出てきたが神様側の方向のやり方などやはり載っているものではなかった。

「まあ普通に考えればそうだよな。久々に読んでみるか」

勇人の部屋の棚には日本の民話や世界の神話関係の本がぎっしりと何冊も置かれている。

子供の頃から歴史や伝説、伝記ものの本が好きだった勇人は久々にその本を1冊読んではまた1冊と手にとっていった。

「人間はもちろん欲にまみれているとは思うけど神様も争いが絶えないなあ」

自分が思っていた記憶の中の想像上の神様とは少し印象が違っていることに気付く。

「神様同士が間違ったことをしているから人間同士も争っているんじゃないのか」

矛盾に疑問、問いかけ、投げかけ、誰が聞くというわけでもなく独り言が出てくる。

「しかし、神様と言うのは大変だと言うことは分かった。しかし、人身御供だけは俺が神様だったら勘弁してくれと人間の前に出てきて絶対に言ってた。当時の神様も困っていたんだろうなあ。もしくは神じゃなく怪異だったかもしれないな」

色々な妄想が勇人の頭の中を通り過ぎていった。 


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