休話「錦馬超は病む」
注意警報!
翠好きは注意してください!
危険です!危険です!
翠が恐ろしいことになってます!
翠ちゃんが・・・なんてならない内に引き返してください!
side馬超
姓を馬、名を超。字は孟起。
いきなりだが、あたしには好きな人がいる。
「玉・・・」
もう何回目なのだろうか。
数えることすら面倒になるほど愛しい人の名を呼ぶ。
変態でエロエロ魔王だけど、やっぱりあたしはあいつが好きなんだ。
あいつもあたしのことを【好き】と言ってくれている。
だけど、それは母上や蒲公英、翡玉にも【同じ】ことを言っているんだ。
なんでだ?
あたしは所詮、その程度なのだろうか?
小さいころからあいつはあたしのことを【好き】と言ってきてくれている。
なのに、なんで?
なんで?
どうして?
なぜ?
あたしだけじゃないのか?
あたしだけに【好き】と言ってくれるんじゃないの?
本当にあたしのことが大好きなのか?
玉がどう思うと、あたしはあいつが好きだ。
好きだ。
大好きだ。
愛している。
なのに、なぜ?
なぜ玉はあたしに言う言葉が他と同じなの?
「ひ、姫?どうなされたのですか?」
「翡玉か。今、空いてる?」
「え、あ、はい。ちょうど政務が終わりましたが・・・」
「そうか、んじゃ鍛錬に付き合ってくれよ」
「はい」
彼女も、あたしの(・・・・)玉のことが好きなんだろう。
でも、殺しはしない。
だって、玉が悲しむじゃないか。
あたしは玉が悲しむ姿なんて見たくない。
一生、ずっとずっとずっとあたしのことを【愛している】と言って欲しい。
ずっと。
ずっとずっと。
ずっとずっとずっと。
ずっとずっとずっとずっと。
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと。
そうだ、いい方法があるじゃないか。
玉をずっとあたしの物に出来る方法が。
side out
「・・・・・」
やあ、俺だ。馬鉄だ。
え?なんでこんなにテンションが低いかって?
いやー・・・なんというか・・・・・。
最近の翠の様子がおかしいんだよねえ。
何か最近一人でブツブツ言ってるらしいし・・・。
ストレスが溜まってきてるのか?
・・・いや、彼女のことだ。ストレスなんてないだろう。
時々、鍛錬してるって聞くし。
ストレス発散はしているようだ。
じゃあ、何があったんだ?
俺の服も消えて行くし・・・最近はなんなんだ?厄日か?
「お兄様いる~?」
「おお、蒲公英どうした」
「政務が終わったからお兄様といちゃいちゃしに来たの♪」
「おお!そうかそうか♪ほらおいで」
膝の上に蒲公英を呼び寄せて、蒲公英成分補給~。
いい匂いだなぁ。
癒されるなぁ。
「そういえばお兄様」
「ん?」
「最近お姉様の様子がおかしいってこと知ってる?」
「ああ、なんか翠の様子がおかしいらしいなぁ」
「そうなんだよ~なんか一人でブツブツ言ってたり目が尋常じゃないくらい怖かったり・・・」
「病気かな?」
「うーん、どうだろ。お医者さんに見せたら普通だって言ってたし・・・」
「本当にどうしたんだ?」
その時、扉がキィと音を立てて開けられる。
現れたのは話の話題になっていた翠だった。
「す、翠か。どうしたんだ}
「蒲公英」
「な、なに?」
俺の声を無視して翠が蒲公英を呼ぶ。
今の翠は・・・・すごい怖い。
腰が抜けそうな・・・そんな雰囲気をしていた。
「玉を借りるぞ」
「え、え、いいよ?」
「よし」
「ちょ、ま」
翠は俺の袖を掴み、引きずるように連れて行く。
思えばここで抵抗しておけば、あんなことにならなかったと思う・・・・。
「ここだ」
「ここって・・・翠の部屋?」
俺が連れてこられたのは翠の部屋だった。
入ると殴られるので入ったことは無い。というかプライベートは大事だしねえ。
翠は俺を部屋の中に招き寄せる。
(こ、これはフラグかっ!?)
まさか翠がこんな大胆なことにでるなんて!
翠とむふふなことやあはーんなことやうふーんなことが出来るとは!
そんな楽観的な考えは翠の部屋に入ったことでまるで呂布が弱兵達に突撃するように全て崩壊した。
「な、なんなんだよこれ・・・・」
俺は目を疑ってしまった。
翠の部屋を覆い尽くしていたのは
消えたはずの俺の服だった。
どうして?
なぜ翠の部屋の中に俺の消えたはずの服があるんだ?
「な、なあ翠これ――――――――」
「玉はあたしのことをどう思ってるんだ?」
俺の声を遮るように翠は言った。
急に体の振るえが止まらなくなる。なんでだ?目の前にいるのは俺の大好きな翠のはず。
「そ、そりゃあ俺は・・・・・
翠のことが大好き(・・・)だ」
これだけは変わらない。
俺は翠のことが大好きなんだ。
俺の言葉を聞いた翠は俺に抱きつく―――――――――――――わけでもなく。
ドスッ
「え・・・?」
胸に突然走る激痛。
見れば心臓に七首(短剣のようなもの)が突き立てられていた。
誰が?
その手は翠だった。
「なあ玉、あたしは玉にとってその程度の女だったのか?」
「そんな・・・ことは・・・」
「母上にも蒲公英にも翡玉にも同じことばかり言う」
「それは・・・み・・・んな好きだ・・・から・・・」
「そうなのか、やっぱりあたしじゃないのか。あたしは誰よりもどんな人物よりも玉が好きだ。優しくしてくれる玉が大好きだ。あたしのことを【愛している】と言ってくれた時は幸せだった。策を練るために考える玉の姿も好きだった。時には厳しくしてくれる玉も好きだった。痛そうに倒れる玉も好きだった。あたしに構ってくれる玉が好きだった。たとえ、あたし以外の女が好きだとしてもあたしは一番だ。あたしは玉のもの。玉はあたしのものなんだ。どんな、どんな玉も好きだ、一番好きだ!愛している!なのにどうして玉はあたしに言う言葉と同じことを他の女にも言うんだ!たとえ母上でも蒲公英でも!女ということは変わりない!なぜなんだ玉!?玉はあたしのものなんだろう?臣下なんだろう?じゃあ、なぜ【好き】という言葉をあたし以外にも使っているんだ!玉はあたしのものなんだ!誰のものでもない!西涼のものでもない!あたしのものなんだ!あたしのものなんだから、あたしのことばかり見ていればよかったのに!なのに・・・なのに玉はあたし以外のことを見ていた!だけど・・・・玉はこれで一生あたしの物になる」
もう声が出ない。
血を流しすぎたのだろう。
翠が俺のことをそう思ってくれていたのはうれしいだけど・・・
だけど、ヤンデレはさすがに勘弁だったなぁ・・・。
ごめん、蒲公英、翡翠さん、翡玉。
どうやら俺は一生翠の物みたいだ。
翠しか幸せに出来なくてごめん。
・・・もう駄目だ。意識が薄くなっているのが分かる。
「フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ・・・・アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!これで・・・これで・・・・!玉は玉は・・・・!あたしの・・・・あたしの物だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
最期に、翠の歓喜の声が聞こえた気がした。
まさかのヤンデレ。
ふと思ったので書いてみました。
最後、もはや翠じゃない・・・