三戦目「問題児は喜ぶ」
…完結が早そうな気が…。
最近、劉備ーとか、曹操ーとか孫策ーとかが西涼まで伝わってきましたねえ。
はっきり言ってどうでもいい。
だから俺は翠達と一緒にいちゃいちゃしていられればいいって言ってますって。
天の御使いは劉備軍にいるそうですねー。
どうでもいい。
ちょーかくを曹操が討ち取ったみたいですねー。
どうでもいい。
こーきんとうも弱まってきたそうですね。
どうでもいい。
西涼は大方平和です。
匈奴に壊滅的な被害を与えましたし、しばらくは来ないと思いますよー。
鮮卑も討伐を完了したという報告も来ましたしー。
羗族とは仲良くやってます。
羊肉おいしいですよー。
臭みはありますけど、お肉柔らかいし。
翠も「うめぇー!」とか言ってましたね。
ちゃんとよく火を通してから食べましょう。
さて、翠や蒲公英、翡翠さんの魅力を書くとキリがないので、めんどうですが、西涼の情勢でも語りますかー。
西涼名士とはそこそこ仲良くやってますー。
それ以外の地域だといじめられますー。
儒教の懸念って面倒なんだよね。
漢民族じゃないとーとか、混血はどうだーとか。
めんどうだよねえ。
食料の生産も安定してますよ。鉄製の農具は便利だって農民の方々も言ってました。
最近、工兵の訓練始めましたー。
あと羗族の一部の方や異民族の遊牧民のちょっとした団体の人達が仕官してくれましてー。
騎射による騎馬弓兵の調練も始められるようになりました。
騎馬弓兵の中距離戦って強いんだよ?
すると、俺のいる執務室に誰かが
「龐令明、ただいま帰還しました」
「翡玉ー!おかえりー!」
「あうぅ」
思いっきり抱き締めます。久しぶりだからね!
彼女こそ龐徳だ。
彼女は純漢民族だけど仲良くやってるんだよー。
しかも強いんだよー。
黒髪が綺麗なんだよー。
「ぎょ、玉様・・・離れてください」
「だーめ、あと一刻はこうしてるの」
「い、一刻もですか・・・?」
彼女こそ西涼の誇る武将の一人龐徳。
闇のように漆黒の髪が美しいんだ。
身長は翠と変わらないけど男の俺がぎゅーってすれば俺の胸に顔を埋めてくれる。
表情に乏しいけど顔に出ないだけで表情豊かなんだよ?
ほらー今も顔を赤く染めているし。
「もー!かわいいー!」
「ぎょ、玉様!お戯れを!」
従順な所が・・・いい!
時々酷いこと言うけどツンデレとして許容範囲だ。
うん、最高。
まじぱねえ。
さて・・・こうしていたいのだが俺も軍師として文官としての仕事があるわけで・・・。
「でもやっぱりこのまま一刻いたい!!」
「そ、それはさすがに!!」
む・・・?
この匂いは少し汗をかいてるな?・・・ニヤリ
「クンカクンカ」
「な、なにをなさっているのですか!?」
「甘い匂いがするからねえ~」
「や、やめてください!まだ私は戻ったばかりで・・・」
おお、顔が真っ赤だ。
・・・むしろ俺は興奮するけどね!
「大丈夫。最高」
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
頭砕けた!
絶対に頭砕けた!!
「ぬおおおおおおおおお・・・・・・」
「・・・玉様が悪いんです」
あ、頭が砕けそう・・・てか絶対に砕けた・・・・!
「では、私は自室に戻りますので」
「お、おう。また後でな」
「はい」
うぅ・・・仕事モードに入ったな・・・。
普段は無表情なんだよ?仕事モードはね。
プライベートモードになると顔を赤くしたりする。かーわいい~。
もう最高。
武威最高。
翠も蒲公英も翡翠さんも翡玉も最高。
「・・・さて、仕事か」
翠とかはどうせ調練だし、さすがに邪魔は出来ないので仕事をすることにする。
なになに・・・?「馬超様は俺の嫁!」
「帰れ!!」
side翡翠
私は馬騰。字は寿成だ。
武威の太守をやっている。
さて、馬鉄こと玉のことを話そうと思う。
彼は昔・・・そうだな、翠が八歳の時だったか。
昔、『名馬の群れが安定付近にいる』という噂があった。
もちろんその噂を聞きつけた金に目を眩んだ者や、単純に名馬が欲しいと思っている者達はその群れを探すわけだが、全員大怪我をして戻ってきた。
何があったんだろうと私は翠を連れ、噂の元となっている名馬の群れを探した。
すると、本当に遠目でも分かるほど毛づやの良い名馬の群れがあった。数は百頭ほど。
その時、盗賊であろう三十人ほどの男達が金にしようとしたのかその名馬の群れを襲おうとしていた。
私は助けようと馬を駆けたが目を疑ってしまった。
翠とそう歳の変わらないであろう少年が馬を指揮して盗賊達を返り討ちにしているのだ。
まるで動きを待っていたように、伏兵の如く現れる馬。その数百頭。
つまり群れの数は二百頭だったのだ。
兵もなく、馬だけで一人、指揮をする少年は馬だけで盗賊達を討伐した。
馬に何度も踏み潰され、体当たりされという状況。
彼は呆然とする私に近付いてきた。
するといきなり彼は言った。
『俺を拾ってくれ!!』
・・・私は耳を疑ってしまったが、面白そうなので彼を養子にすることにした。
理由が面白そうというのはきっと、かつて楊州で名をはぜていた好敵手の性格が移ってしまったのだろうな。
彼を養子にすることで必然的に名馬二百頭を手に入れることが出来た。
西涼で匈奴討伐で私は名をあげ武威太守となった。
名馬の動きは凄まじい。その馬に乗った騎兵は最強かもしれないといえるほどである。
・・・さて、彼はどうやら自分の名前すら分からないらしい。
というよりも真名もだ。
私は【馬】の姓を与え、【鉄】という名を授けた。
理由としてはもし私にもう一人子供が出来ていたらつけようと思っていた名だったからだ。
真名は玉。・・・彼には輝く何かがあると思ったという理由が大きい。
何よりも彼の統率力。馬だけで賊討伐とかありえない。だが、ありえたのだから凄い。
あの歳で。多分、統率力だけなら翠も超える人物になるだろう。
ただ・・・・。
ただ、残念なのは武の才能が欠片もなかったことだろう。
しかし、文官としての才能は大きくあった。
とりあえず持ってきた書物を暗記は出来なくても感覚で覚え、慣れてしまっている。
内政、戦術、戦略、陣形などどんどん覚えていく。
龐徳こと翡玉は漢王朝から賊討伐の要請があった時に助けた村の娘だった。
私は彼女に真名を与えた。娘同然だしね。私の翡翠と玉をあわせたものだ。
翡玉の救出は玉の軍師としての才能が開花した時とも言える。
あれは見事だった。
気が付けば彼はいなくてはならない存在となっていた。人となりも文官としても。
翠や蒲公英、翡玉にべったりだったが・・・。
気が付けば幼かった翠も蒲公英も翡玉も玉もすっかりたくましくなっていた。
これが親元を離れる子供達の姿を見る親というべきだろうか。
私も歳を取ったものだ。
それでもそんな私を女性扱いしてくれる玉には少し嬉しかったりする。
…亡くなった旦那を思い出す。
不器用で頼りないけど、優しいところが。
side out
side翠
「う…厠…」
寝る前に水飲み過ぎたかなぁ・・・?
う・・・余計なことを考えていたら尿意が・・・・。
もらすわけにはいかないぞ・・・・!
そんな感じであたしは厠に向かっていると、光が部屋から漏れている。
まだ、誰かおきてるのか?
もう遅い時間だしなぁ・・・
まさか・・・・
「幽霊・・・?」
前に玉が話していたことがあった。
なんでも死んだ人達が出てくるらしい・・・。
幽霊は触ることもできないという・・・。
「うぅ・・・」
ど、どうしよう・・・!
厠行かないと!
誰がいても知らないから、あたしはその部屋の前を通り過ぎようとする。
しかし、その部屋の中にいたのは・・・
「・・・玉?」
あいつ、こんな時間になにやってんだ?
というか、あの書簡の山って・・・
「なにしてるんだ翠?」
「うきゃあ!」
・・・・はぅ!!
いきなり話しかけられて・・・にょ、尿意が・・・・
「・・・腰抜けたのか?」
「あぅあぅあぅ・・・」
驚いちゃって下半身に生暖かい感触が・・・。
うぅ・・・どうしよう・・・あえて玉に見られちゃったよぉ・・・。
「うぇぇぇぇぇん・・・・・」
「なぜ泣く!?」
「だってよぉ・・・・玉に見られちゃったんだしぃ・・・」
「なーに言ってんだ。俺は翠の全てが好きなんだ!・・・いや、好きじゃなく大好きだな!たとえ、どんなことをしても俺は翠を愛しているぜ。だからさ、泣き止んで!あわわ・・・あ、やばい。・・・じゃなくて、はわわ・・・じゃなくて、な?な?翠、安心しろ、俺はこう見えて口は堅い、言わないからな?むしろ誰にも教えない!眼福、眼福・・・むしろ俺は見れて嬉しいぞ?はぅ!その上目遣いはやめてくれ!かわいい!翠かわいい!あー!違う!そうじゃなくて、まあ、うん。人はお漏らししちゃうのも仕方ないさ!・・・じゃなくて、えーとどうやって慰めればいいんだ?あー、うん、とりあえずまあ・・・」
あたしに手を差し伸べられる手。
「着替えようぜ。後処理は任せろ」
「・・・うん」
変態だけど。
変な奴だけど。
エロエロ魔王だけど。
おかしな奴だけど。
ふざけているような奴だけど。
それでも誰よりも優しくて、楽しくて、面白くて、便りになる玉。
・・・それにガサツで男みたいなあたしを女として見てくれるし・・・・。
少し・・・見方を変えるべきかな・・・?
「下穿きは俺が洗っとくから!はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
・・・前言撤回。
やっぱりただの変態だ。
それにしても・・・あの大量の書簡って・・・なんなんだ・・・?
翠:
よう、あたしだ。
…というか、なんというか、恥ずかしいところ見られたというか…。えーと、なんだ「お見苦しいところをお見せして申し訳ありません」って言えばいいのか?
今回は母上が玉を拾ってきたことだったな。あたしも驚いちまったよ。「今日から新しい家族よ」なんて言って帰ってきたし。
だけど、あいつの分からないこといっぱいあるんだよな?
まあ、よく分からないけどよ。
次は黄巾党の乱のあとだったな。確か…董卓が上洛したんだってな。ま、あたしには関係ないけどな。
次回もよろしく頼むな!