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西涼の鉄ちゃん  作者: 坂本 康弘
群雄割拠~西涼と覇王~
18/27

十七戦目「問題児は泣く」

久々の更新。

感動ものではないけど・・・。

やっぱり血の繋がりはなくても、自分が好きで愛していもいて、お世話になった人が亡くなったら辛いですよね。

玄徳が徐州から追い出されたらしい。


・・・どうでもいいのだが。


「母上ぇ!嫌だ!死んじゃ嫌だ!」


「そうだよ叔母様!諦めないでよ!」


「翡翠様!気持ちを確かに」


俺の前にはすっかりやせ細ってしまった翡翠さんのベッドに縋りつくように涙ながら言っている。


・・・もう・・・翡翠さんは・・・・


「ふふっ・・・これも天命・・・仕方が無いことよ・・・」


翡翠さんの顔はすでに陶器のように白い。


元々白かった肌は病的に白くなっている。


呼吸も、とてもゆっくりだ。


俺は、翡翠さんに縋りつく三人娘の後ろで、ただ、無言で見ていた。


「私だって、人間だもの。病気にもなるわ。・・・確かに武人としては戦場で死にたかったかもしれないけど、これはこれでいいわ」


「そんな弱気なこと言わないでよ!」


「翠。私は嬉しいわ。こうやって家族に看取られて死ねるのだから」


「やだよ!死なないで!蒲公英もうイタズラしないからさ!」


「蒲公英。馬家の一人として、翠を支えてあげてね。それから、少しは翡玉を見習いなさい」


「翡翠様・・・私にとって貴女は、恩人でもあり、師でもあり、母でもありました・・・。貴女を失えば私はどうすれば・・・」


「強く生きなさい。武人としても一人の女の子としても。みんな、まだ若いのよ」


翡翠さんは目で三人娘を見ながら語る。


動きは、弱弱しい。


「玉・・・いえ、馬鉄」


「ここに」


「貴方には、本当にお世話になったわ。私がこうして家族といられるのも貴方のおかげ」


「ありがたきお言葉・・・です」


「それから玉。貴方に字を与えて無かったわね・・・そうね、【仲誠】と名乗りなさい。馬仲誠」


「はい・・・翡翠さん・・・ありがとうございます」


「それから玉・・・こっちに」


「はい?」


俺は翡翠さんに腕を引っ張られて顔を近づける。


「翠と蒲公英、翡玉をよろしく頼むわよ。身も心も」


「もちろんです」


「あと・・・」


「へ?――――――――むぎゅう」


「な、なななななな」


「お、叔母様っ!?」


「ひ、ひ、ひ、ひ、ひひひ、ひ」


塞がれる俺の口。


…あの時のは温かみがあったけど今回は冷たい感じがした。


俺はただ流れに任せて、それを受け入れる。


三人の驚く視線を受けながらも、唇――舌が浸入してくる。


永遠とも感じるたった短い時間。


…幸せだった。


「ふふっありがとう玉。これで心置きなく逝けるわ…」


「……」


「また、貴方と会いたい…」


「ひ、すいさん…」


「翠、蒲公英、翡玉、玉。おやすみなさい」


「ははうぇ…」


「やだよぉ…」


「びずいざまぁ…」


「…」


翡翠さんはまるで眠るように亡くなった。


俺以外の三人の泣き声が響く。


…俺は、何も言えなかった。


――――――――――――


翡翠さんが亡くなって一ヶ月が経った。


情勢が変わり始めた。


孟徳が西涼に宣戦布告したのだ。


翠も蒲公英も翡玉も、翡翠さんが治めていた土地を奪われたくないと徹底抗戦するつもりだ。


無論俺もだ。


思えば翠の勢力は西涼から長安、南には漢中北部まで伸びてきていた。


「はぁ…」


【漢忠臣馬騰之墓】


そう彫られた墓石の前に俺は溜息をついていた。


ここは翡翠さんとキスをした丘だ。


「はぁ…」


もう何回目か分からない溜息をつく。


正直、勝てる策が見つからない。


将の質でも数でも負けてるのだ。


兵士なら質も数も騎兵なら勝てる。


しかし、総合的に考えれば兵士は負けてしまっている。


…異民族の支援を受ければどうにか…。


「翡翠さん。…この土地に居続けることは難しそうです。だから、せめて翠や蒲公英、翡玉だけは…」


「盟主」


後ろを見れば西涼兵が被る防寒用の動物の毛皮で作った兜というより防止が目に入った。


それが幾人も。


「張横か。…程銀に馬玩、成公英、李甚…」


それは西涼の将でもあり俺の部下でもある将軍。そして西涼娘同盟の会員。


「我らは」


「盟主のためなら」


「たとえ」


「火の中」


「水の中」


「空の上」


「山すら動かします!」


「だから」


「何なりと」


「ご命令ください!」


「我々は」


「馬超様、馬岱様、龐徳様のため」


「全身全霊を懸けて」


「西涼娘連合の一員として」


『行動しますっ!』


「みんな…」


やばい…うるって来る。


部下に慕われて…こんなに嬉しいことはない…!


「俺は命を懸けて、曹操と戦う。だから…」


俺は一拍おいて言った。


「皆の命。俺にくれ」


『御意っ!何なりとお申しつけください!』


本当に錬度が高いものだ。


一心同体と言わんばかりの声。


俺は微笑んだ。




―――――――


Said曹操


私が孫策という英雄に戦う前に一つの不安要素があった。


そう、西涼だ。


劉備を徐州から追い出したことで楊州への足掛かりも増えた。


だから孫策を倒して楊州を手に入れ、荊州を落とし、態勢を整った劉備の蜀になるであろう益州を制圧する。


けれどその計画の前には根本的な問題があったのよねぇ…。


馬超率いる涼州…いえ、西涼連合なのよ。


馬鉄のことだ。


私が南下している間に司州を落とし、そのまま河北を手に入れようとするに違いない。


だから憂いを取り除く必要がある。


孫策の前に決戦する必要があったために私は宣戦布告をしたのだけれど…


「まさか近隣の異民族と連合組むとはねぇ…」


馬鉄の策略だろう。


元々異民族に人気がある馬騰だったのだ。馬超も馬鉄も人気がある。


西涼軍は三十万にまで膨れ上がった。


まだ増えるらしいけど…。


「華琳様〜いかがなさいました〜?」


のんびりとした声で書簡を抱えた風がやって来る。


「あぁ…風…」


「むむっ?その様子だと華琳様は西涼…じゃなくて馬鉄さんのことで悩んでますね〜?」


「ええ、そうよ。何か策はあるかしら?」


「…ぐぅ」


「風、今寝たら、夜寝かせないわよ?」


「…おぉ!馬鉄さんの強さを考えてたら寝てしまいました」


「で、策は?」


「そうですね〜。西涼連合は最大四十万まで増えると思います。今は三十万ですね〜。馬超さんは十万、馬鉄さんは現時点で二十万率いていると思ってください」


「ええ、私達は十五万しか出せないわよ」


「今回の策は謀略というべきですか〜、ちょっと耳を貸してください〜」


「いいわよ」


「……と……で……するんです〜」


「さすが私の軍師ね」


「いえいえ〜凛ちゃんとも後で話し合ってみます〜」


さすが私の軍師。


将の数では私達の方が優れてる。


兵の数では負けてるかもしれないけど…。


さて、私もさっさと済ませて遠征準備しなきゃ!


ふふふ…馬鉄に馬超はどこまで私を楽しませてくれるのかしら。

勝ち目無い戦いだから、期待できない。

そんな感想を貰いましたが、まあ、仕方ないでしょう。

勝つ負けるは読者のみなさんが楽しみにしていてください。

この作品の次回作の布石になりますからね、この作品は。

だから、最後まで馬鉄君を暖かい目で見てやってください。

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