ねこのおみせ
「ただいま」
そう一言告げて僕は窓の縁に爪を立てる。
そうするとおばあちゃんはいつもにっこり笑って何か言うんだ。
窓を開けてもらって中に入ると暖かい空気が流れてる。
ご飯食べてまた遊びに行こうと思ったけど、眠くなるなぁ。
「あらあら、気持ち良さそうな顔で寝ちゃって」
--ガラガラ
「あら、いらっしゃい。今日はちょっと静かにしてね。ほら」
おばあさんが指をさした先には美しい毛並みの黒い子猫が丸まって寝ていた。
そんなことはお構いなしに騒ぎ、それぞれ好きなお菓子を選ぶ子供たち。
--ぼく、これ。
--おれ、くじ引きたい。
--えっと、わたしはこれがいいな。
「んー、うるさいなぁ」
僕は騒がしい音に気付き起き上がると、目の前には人間の女の子が居た。
--かわいい。おばあさん、このこだっこしていい。
「うわぁ、やめろ」
僕の抵抗など無視して女の子たちは僕を抱き上げた。
この子たちには僕の言葉は通じないみたいだ。
おかしいなぁ。おばあちゃんには通じてるのに。
でも、気持ち良いなぁ。
--このこ、のどならしてるよー。
「あらあら、気持ちいいんだねぇ」
ほら、やっぱりおばあちゃんには分かるんだ。
このまま寝ようかなぁ。
--おい、おれらにもさわらせろよー。
--いやよ、あんたたちらんぼうするでしょ。
--しねぇよ。
「ほらほら、仲良くしなきゃだめよ」
--はーい。
男の子たちの手に抱かれると今までの気持よさが嘘のように無くなった。
ゴツゴツしてる。
「いーやーだー。はなせー」
--なんだよ、こいつ。かわいくねぇなぁ。
--ね、せっかくなでてやってるのに。
男の子たちの手から飛び降りると僕は店先に走っていく。
よし、誰も追いかけてきてないみたいだ。
「おばあちゃん、そろそろまた遊びに行ってくる」
「そうかい、いってらっしゃい」
おばあちゃんの笑顔が僕を見送った。