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井戸から又子がきっと来ると思ったら、そのまま落ちて異世界転移でした  作者: 優未緋


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第6話 夜、地面が揺れる。私、何もしてない……よね?

揺れた。


 最初は、ほんの少しだった。


 藁の上に寝転んで、毛布をかぶって、

 やっと落ち着いたところで――


「……?」


 天井の梁が、きしっと鳴った。


(え、今のなに)


 隣の部屋から、誰かのいびき。

 外は静か。


 気のせいかな、と思った次の瞬間。


 ――ぐらっ。


 今度は、はっきり揺れた。


「……えっ」


 藁が、ざわっと動く。

 壁の向こうで、何かが落ちた音。


(地震?)

(この世界にも地震あるの?)


 私は半身を起こした。


 その時、外が騒がしくなった。


「おい!」

「またかよ!」

「夜に来るのやめろ!」


 複数の声。

 怒鳴り声。


(……また?)


 嫌な単語が、頭に引っかかる。


 私は毛布を羽織って、そっと外に出た。


 夜の街は、昼と全然違った。

 松明の光が揺れて、影が伸びる。


 人が集まっている。


 路地の奥。

 古い石畳の一角。


「……え」


 地面が、沈んでいた。


 ほんの少し。

 でも、確実に。


 亀裂の隙間から、水がにじんでいる。


「また水脈がずれたな……」

「最近多すぎる」

「前も、こんな感じだった」


 住民たちの会話が、断片的に耳に入る。


(前も?)


 胸の奥が、じわっと冷える。


 私は、何もしていない。

 今日は、井戸は出していない。


(……昨日は?)


 森の中。

 地面に手をついて。

 ごぽっと音がして。


(……消えてない)


 あの井戸、消えてない。


 ぞわっとした。


「……いやいやいや」


 私は小さく首を振る。


(私のせいって決めつけるの、早い)

(偶然、偶然)


 でも。


「……昔と同じだな」


 その一言で、心臓が跳ねた。


「最初は小さく沈む」

「そのうち、広がる」


(やめて)


 誰も私を見ていない。

 疑われてもいない。


 それなのに。


(私、ここにいちゃダメな人間なんじゃ)


 そんな考えが、頭をよぎる。


 人混みの端で、私は立ち尽くした。


 少し離れたところで、

 誰かが地面を見下ろしている。


 フードの影で、顔はよく見えない。


 でも、その立ち方だけで――

 なぜか、見覚えがある気がした。


(……気のせい、だよね)


 その人は何も言わず、

 ただ、亀裂と水の位置を見ていた。


 私は、そっとその場を離れた。


 倉庫に戻り、藁に潜り込む。


 心臓が、まだうるさい。


「……私、井戸出してないよね?」


 誰も答えない。


「今日は……出してない」


 自分に言い聞かせる。


 でも。


「……でも」


 昨日は、出した。


 毛布を、ぎゅっと握る。


「……考えるの、明日でいいや」


 怖い時は、寝るに限る。


 そう決めて、目を閉じた。


 地面は、もう揺れていない。


 でも。


 この街が、

 静かに沈み始めている気がして――


 私は、なかなか眠れなかった。

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