表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
井戸から又子がきっと来ると思ったら、そのまま落ちて異世界転移でした  作者: 優未緋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/53

第51話 使えなくなるという選択


 結論を出したのは、

 議論の直後じゃなかった。


 その場では、

 私は何も言わなかったし、

 誰も、続きを急かさなかった。


 井戸のそばを離れ、

 しばらく歩いた後。


 ようやく、私は口を開いた。


「……ねえ」


 声は、思ったより普通だった。


「私がここにいる限り」


「管理は、もっと“うまく”進みますよね」


 ロウは、否定しなかった。


「進むだろうな」


「……ですよね」


 乾いた笑いが出る。


「私」


「止めてるつもりだったのに」


「一番、整えてました」


 遠くで、井戸の滑車がきしむ音がする。


 誰かが、水を汲んでいる。


 今日も、普通の日だ。


「……それで」


 私は、足を止める。


「一つ、提案があります」


 ロウが、こちらを見る。


 そして。


 あの人――

 管理思想の起点にいる人も、

 何も言わず、待った。


「私を」


 息を吸う。


「使えなくしてください」


 一瞬、風が止まった。


「……封印か」


 あの人が、静かに言う。


「完全に消えるわけではない」


「だが」


「井戸との接続は、切れる」


 私は、うなずいた。


「それでいいです」


「……理由は」


 あの人が、続ける。


「世界を救うため、ではないな」


「はい」


「管理を壊すためでもない」


「はい」


 一拍。


「完全制御を、不可能にするためです」


 その言葉に、

 あの人は、少しだけ考えた。


「合理的だ」


 即答。


「君がいなければ」


「判断は、遅くなる」


「迷いも、増える」


「それは」


「世界にとって、リスクだ」


 私は、苦笑する。


「そうですね」


「でも」


「それが、普通だと思うんです」


 ロウが、低く言う。


「……止めない」


「君が、そう決めたなら」


 胸の奥が、少しだけ温かくなる。


「……ありがとう」


 私は、そう言ってから気づく。


「いや」


「ありがとう、じゃないですね」


「止めないでくれて」


「それだけで、十分です」


 準備は、淡々と進んだ。


 大きな魔法陣も、

 派手な詠唱もない。


 ただ。


 井戸の水面に、

 静かに触れる。


 冷たい。


(……あ)


 その瞬間、

 分かった。


 位置が、分からない。

 流れも、分からない。


 あの、嫌な予感が――

 完全に、消えていた。


「……終わったな」


 ロウが、静かに言う。


 世界は、変わらない。


 空も、地面も、

 井戸の水も。


 でも。


 私だけが、外れた。


「……ねえ」


 私は、少しだけ笑う。


「これで」


「誰も、正解って言えなくなりましたね」


 あの人は、うなずいた。


「そうだ」


「だが」


「それでも、世界は進む」


「ええ」


 私は、息を吸う。


「それで、いいです」


 井戸は、今日も水を湛えている。


 管理は、続く。

 判断も、続く。


 ただ。


 私という“近道”だけが、消えた。


 それが、

 私の選んだ結果だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ