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井戸から又子がきっと来ると思ったら、そのまま落ちて異世界転移でした  作者: 優未緋


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第4話 街が見えたのに、全然安心できないんですけど

街が見えた。


 丘を越えた先、石の壁に囲まれた建物の集まり。

 屋根があって、道があって、人が動いている。


「……街だ」


 思わず声が出た。


「街! 文明! 人類の勝利!」


 私は一人でガッツポーズをした。

 誰も見てない。たぶん。


 正直、もう限界だった。

 草原は危険、森は怖い、うさぎは殺意高すぎ。

 ここまで生きてこれたのが奇跡レベル。


「助かった……本当に助かった……」


 半泣きで街へ向かって歩き出す。


 ――が。


 近づくにつれて、胸の奥がざわついた。


 街門の前に立つ兵士。

 鎧に槍、姿勢がやたらいい。


 私を見た瞬間、二人同時に空気が変わった。


「止まれ」


 低い声。


「身分は?」


「えっ」


 身分。


(え、ここ身分社会なの?)


「えっと……高校生です!」


 沈黙。


 あ、やった。

 今日もやった。


「……職業ではないな」


「ですよね!」


 兵士の一人が私の足元を見る。

 次に、背中。

 最後に、手。


 その視線に、嫌な既視感が走る。


(……森で会った人と同じ見方)


「旅人か?」


「た、たぶん……?」


 自信はない。


「荷物は?」


「ないです!」


「武器は?」


「ないです!」


「……魔法は?」


 心臓が跳ねた。


 一瞬、言葉に詰まる。


(人前で使うな)

(見られたら終わる)


 どこかで聞いた声が、頭の奥に引っかかる。


「……わかりません!」


 苦しすぎる誤魔化し。


 兵士はじっと私を見てから、ため息をついた。


「入る前に説明が必要だ」


「説明……?」


「この街では、勝手な魔法行使は禁止されている」


 来た。


「特に、土地に影響するものは重罪だ」


 背中がひやっとする。


(……井戸)


「違反すれば拘束。

 悪質なら――追放」


 軽い口調なのに、重い言葉だった。


「……ちなみに」


 私は恐る恐る聞く。


「井戸、作るのは……?」


 二人の兵士が、同時に嫌な顔をした。


「……無許可なら最悪だな」


「水利を壊す」


「街が死ぬ」


「……ですよねー……」


 納得しかない。


 手続きは思ったより長かった。

 名前、出身、目的。


「……ちょっと迷いました」


 それ以上は言えなかった。


 結果。


「身元不明の旅人として、仮入街だ」


「仮!?」


「問題を起こせば、即追放だ」


 笑顔で言われるのが一番怖い。


 門をくぐった瞬間、私は悟った。


(街に入れた=安全、じゃない)


 ここは、


 ルールがある危険地帯だ。


「……生き延びるの、思ったより大変そう」


 でも。


 戻る場所は、もうない。


 私は深呼吸して、街の中へ歩き出した。


「とりあえず……今日は寝床を探そう」


 井戸は、出さない。


 絶対に。


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