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井戸から又子がきっと来ると思ったら、そのまま落ちて異世界転移でした  作者: 優未緋


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第17話 別の街へ行く途中で、嫌な予感しかしないんです


 出発は、朝だった。


 門の外に集まったのは、

 兵士が二人。

 私。

 そして、フードの人。


 思ったより、少ない。


「……護衛、これだけですか?」


「目立たない方がいい」


 兵士が答える。


(目立つ案件だと思うんだけど)


 街を出ると、景色はすぐに変わった。

 石畳が途切れ、土の道になる。


 草原。

 遠くに森。


 そして。


「……静かですね」


「そうだな」


 フードの人が言う。


「異変が起きている時ほど、道中は静かだ」


(フラグ立てないで)


 私は、周囲をきょろきょろ見ながら歩く。


「……その街の井戸、本当に“出ない”だけなんですか?」


「今のところは」


「今のところ、が怖いんですよ」


 兵士の一人が会話に入る。


「水が消えるわけじゃない」


「触れる」


「ただ、持ち上げると戻る」


「……井戸に拒否られてる?」


「そんな感じだ」


(井戸、意思持ってないよね?)


 道の途中、小川を渡る。


 私は、立ち止まった。


「……あれ」


 胸の奥が、ざわっとした。


「どうした」


「……ここ、水ありますよね」


 当たり前の確認。


 小川は、ちゃんと流れている。


「でも」


 私は眉をひそめる。


「なんか……浅い感じがしない」


 フードの人が、すぐ足を止めた。


 しゃがみ込んで、水を見る。


「……水量が、微妙に合わない」


 兵士が首を傾げる。


「普通に流れてるぞ」


「“普通”に見えるのが問題だ」


 フードの人は、石を一つ投げた。


 ちゃぽん。


 音が、軽い。


(え、今の分かるの?)


「……別の街の井戸と、同じ違和感だ」


 背中が、ひやっとする。


「ここ、街から離れてますよね」


「水脈は、離れない」


(やめて)


 その後、何事もなく歩いた。


 何も起きない。


 それが、逆に怖い。


 昼前。


 丘の上で休憩を取る。


 遠くに、次の街が見えた。


「あれが……」


「そうだ」


 私は、無意識に手を握りしめていた。


(また、井戸がある)


(また、問題がある)


 兵士が水筒を配る。


「……飲めるかな」


 思わず口に出る。


「飲める」


 フードの人が言う。


「今は、な」


(その“今は”やめて)


 少し黙ってから、私は聞いた。


「……私、行かなくてもよかったんじゃないですか」


 歩きながら、ぽつり。


 フードの人は、少しだけ考えてから答えた。


「可能性は、あった」


「でも」


「井戸の異変を“感じ取れる”人間は、君しかいない」


(唯一無二とか、嬉しくない)


「……逃げても、よかったんですよね」


「今も、引き返せる」


 即答。


 私は、前を見る。


 街は、もうすぐだ。


「……でも」


 小さく、笑う。


「行かないと、もっと怖い気がして」


 フードの人は、何も言わなかった。


 ただ、歩調を合わせた。


 街の門が、近づく。


 その瞬間。


 胸の奥が、きしっと鳴った。


(……来た)


 まだ、何も見えない。

 何も起きていない。


 でも。


(あの井戸、静かすぎる)


 私は、確信していた。


 この街の井戸は、

 出ないだけじゃ、済まない。


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