第11話 井戸を止める方法は、まだ決まってない
集められた。
というより、
自然に集まってしまった、が正しい。
兵士数名。
井戸の周りを見ていた大人たち。
そして、私と――フードの人。
全員、微妙に距離を取って立っている。
(この円、居心地悪すぎでは)
最初に口を開いたのは、兵士だった。
「被害は、最小限で済んだ」
それは事実らしい。
建物は傾いたが、崩れてはいない。
怪我人も、今のところいない。
「……彼女が、止めたのか?」
視線が、私に集まる。
(やめて、主語を私にしないで)
「止めた、というより……」
言葉に詰まる。
「出さなかった、です」
場が、静かになる。
「……出さなかった?」
「はい」
私は、両手を見た。
「出そうと思えば、たぶん出ます」
「でも、出したらヤバいのは分かります」
自分で言ってて、すごく怖い。
フードの人が、補足する。
「この力は、制御型じゃない」
「呼び水だ」
「一度繋がると、向こうからも来る」
兵士の一人が、顔をしかめた。
「……止められないのか」
「完全には」
即答。
空気が、重くなる。
(ですよねー)
「じゃあ、封じるしかないのでは?」
誰かが言った。
私は、その言葉に反応してしまった。
「……封じるって?」
フードの人が、少しだけ首を傾ける。
「使えなくする」
「あるいは、使うたびに代償を払わせる」
(やだな、その響き)
「……ちなみに」
恐る恐る聞く。
「その代償って、どれくらい?」
「命、の場合もある」
「ですよね!!」
思わず声が裏返った。
兵士が、ため息をつく。
「封印は、時間がかかる」
「その間に、また揺れる可能性がある」
つまり。
(今すぐの答え、ない)
全員が、同じ結論に辿り着いた顔をしていた。
私は、ふと気づく。
「……あの」
視線が集まる。
「私、ここにいない方がよくないですか?」
「私がいるから、井戸が反応してるなら」
正論だと思った。
でも。
「逆だ」
フードの人が言った。
「君が離れたら、暴走する可能性がある」
(最悪の置き土産)
「……じゃあ、どうすれば」
誰も、即答できなかった。
沈黙。
その中で、私は一つだけ理解した。
(これ、“解決”じゃなくて“管理”の話だ)
完全に止める方法は、まだない。
だから、起こさないようにする。
「……私」
小さく、手を挙げる。
「勝手に井戸、出しません」
「近づく時も、必ず人呼びます」
「できること、それくらいですけど」
兵士は、しばらく私を見ていた。
そして、言った。
「……それでも、助かる」
意外な言葉だった。
フードの人が、静かに続ける。
「今は、それでいい」
「理解する時間が必要だ」
私は、深く息を吐いた。
「……じゃあ」
苦笑いする。
「当分ここ、離れられませんね」
「そうなる」
即答。
(異世界来て、いきなり地縛霊ポジション)
でも、不思議と。
昨日までより、
少しだけ足元が固まった気がした。
井戸は、まだそこにある。
危険も、消えていない。
でも。
(逃げないって決めたのは、私だ)
それだけは、はっきりしていた。




