番外編・エドワード殿下の困惑と、募る執着
全ての騒動が収束し、カタリナ様が悪役ではなく国の英雄となった今、エドワード殿下の胸には言いようのない複雑な感情が渦巻いていた。
(リリア嬢は、私ではなく、あのカタリナ嬢を救った......?なぜだ?彼女はもっと、私のようなヒーローに守られるべき、可憐な存在だったはずだ)
リリアは現在、カタリナ様の私設秘書として、常に彼女の傍らにいる。本来なら殿下の婚約者候補として、王子の隣に立つはずだったリリアが、今は「エスペランサ公爵令嬢の忠実な従者」として、カタリナ様の輝きを一層引き立てる役割を完璧にこなしていた。
ある日、エドワード殿下は、カタリナ様と共に公務をこなすリリアの姿を目撃した。
カタリナ様が難しい顔で書類を読んでいると、リリアはすぐに「カタリナ様、この部分、紅茶が冷めないうちに確認いたしますか?」と、淹れたての温かい紅茶を差し出した。カタリナ様はそれを受け取り、無言で一口飲む。その様子は、まるで長年連れ添った夫婦のようだった。
「あのリリア嬢が.....カタリナ嬢の好みを把握し、そこまで尽くしているというのか」
エドワード殿下は唇を噛み締めた。カタリナ様は、リリアが淹れた紅茶以外は、ほとんど口にしないらしい。
リリアのあの無邪気な笑顔が、今や殿下には「自分を拒絶するための完璧な仮面」のように見えた。
(どうすれば、あのリリア嬢を、私の傍らに取り戻せる......?)
エドワード殿下の心には、諦めきれない執着と、カタリナ様への静かな嫉妬が渦巻いていた。




