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第一話 指揮官はまず楽観的であることが重要である   アメリカ合衆国第三十四代大統領 ドワイト・D・アイゼンハワー ②

 神奈川県にある海上自衛隊厚木航空基地は、かつて帝国海軍によって建設された帝都防空の要衝。終戦時にコーンパイプを咥えた連合国軍最高司令官、ダグラス・マッカーサーが降り立って以来、長きに渡り米国海軍と共同使用されていたが、二〇一八年に米海軍第五空母航空団が岩国へ移駐したことに伴い、海上自衛隊の専用基地となった。そして米軍の残したインフラをそのまま活用すべく、ここに戦後初の航空母艦搭載戦闘機部隊が創設されることになったのだった。


 なお、基地名に「厚木」という地名が付いているが、実際の所在地は綾瀬市と大和市であり、「厚木市」との間には海老名市が横たわっていて隣接すらしていない。これについては諸説あるが、建設当時、宿場町として近隣で最も名の通っていた「厚木」を冠した、との説が有力だ。


 駐機場(エプロン)に並ぶのは漆黒の最新鋭ステルス戦闘機・ロッキード・マーティン社製F35BライトニングⅡ。空自が導入を進めている通常離着陸タイプのA型と異なり、カタパルト(航空機射出機)を持たない強襲揚陸艦での運用を念頭に開発されたSTOVL機(短距離離陸・垂直着陸が可能な機体)で、防衛予算上、米国のような本格空母を保有・維持できない海上自衛隊にはうってつけの機体だった。


「隊長の勝野だ。本日、ここに諸君と〝ながと戦闘飛行隊〟を立ち上げられることを誇りに思う」

 勝野英之(かつのひでゆき)一等海佐。TACネームはアーサー。ついこの間まで一騎当千の猛者が集う飛行教導群の群長を務めていた、空自ではその名を知らぬ者は居ない、紛うことなきトップパイロット。この部隊の編成に当たったのも彼で、有望な若手パイロットを引き抜かれた空自の部隊長たちの誰一人、飛行六千時間を超える彼に異を唱えることなど出来なかった。


「諸君も知っての通り、近年、我が国周辺では地政学リスクの高まりにより、各国で軍拡が進んでおり、この地域の軍事バランスが大きく崩れることが懸念されている。このバランスを保つべく日米同盟は更なる深化を求められており、その一翼を担うため我々はここに集うこととなった。自衛隊初の空母戦闘飛行隊、諸君らはその栄えある初代メンバーだ」


 チラッと周りを見回す。ここに集ったメンバーの誰もが、一度や二度は名前を耳にしたことのある者ばかりだ。

 勝野の傍らに立つ副隊長のTACネーム・ポッターこと、水島裕(みずしまゆたか)二等海佐も同じく飛行教導群出身で、数多のイーグルドライバーたちを震え上がらせた凄腕パイロット。そして最前列に座る四機編隊長(フライトリーダー)の二人。

 ガッツこと柿崎雅和(かきざきまさかず)三等海佐はその腕を買われて米国空軍戦闘センターに三年間留学していた経験を持ち、ビーバー・菅沼淳史(すがぬまあつし)三等海佐はブルーインパルスで花形の五番機(リードソロ)を務めていた、いずれもかなりの実力者。

 他の若手メンバーも一癖も二癖も持ち合わせた、売り出し中のエース級ばかり。統合幕僚監部の仲介(仲裁?)があったとはいえ、よく空自が彼らの海自への転籍を承諾したと思えるほどの陣容だった。


「国際情勢が急激に変化してゆく中、我々は即戦力化を求められている。悠長に錬成をしている時間的余裕など我々には無い。だから俺は現時点での実力だけでなく、将来的な伸び代まで含めてこの目で君たちを選んだ。我々が共に切磋琢磨し、成長し続け、そのプレゼンスを見せつけることが抑止力に繋がる。ここにいるメンバーは必ずやその期待に応えられる精鋭揃いと信じている」


 ここに、あたしがいる。

 そう考えるだけで否が応でも気持ちが昂ってくる。 


「一週間後には〝ながと〟に乗艦し、二週間の訓練航海だ。それまでには新鋭機、ライトニングB型に慣れてもらう必要がある。チンタラやっている時間は無いぞ。いかな手練れとて俺が使えないと判断すればその場でエリミネート(落第)、原隊に帰ってもらう。以上だ」


 勝野の言葉に気を引き締める。誰にも負けたくない。ファイターパイロットである以上、性別は関係なかった。


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