第15筋肉 覚醒!怒りの筋肉とドワーフの生還
「エルファ…エルファァァァァァ!!」
割男の絶叫が、燃え盛る森に響き渡る。その声は、怒りと悲しみに震え、彼の「筋肉」は、その感情に呼応するかのように、激しく脈打っていた。
「くくく…無駄なことだ」
その時、どこからか、冷酷な男の声が響いてきた。
「そのエルフは、もう助からない。『魔王軍』の『呪い』を、甘く見るな…」
「貴様…!どこだ!姿を、見せろ!」
割男は、怒りに満ちた表情で、声のする方を睨みつけた。
「くくく…姿を見せる必要などない…。どうせ、お前たちも、ここで、終わりなのだからな…」
「なに…!?」
「この『カースド・フレイム』は、対象を、跡形もなく、焼き尽くすまで、消えることはない…。そして、その炎は、お前たちの『筋肉』にも、確実に、ダメージを与えている…」
「くっ…!」
割男は、歯噛みした。確かに、この黒い炎は、通常の炎とは、明らかに違う。熱さだけでなく、体力が、そして、「筋肉」が、徐々に、蝕まれていくような、不快な感覚が、全身を襲う。
「お前たちの『筋肉』、我らが、魔王様に、捧げてやろう…」
「させるか…!」
割男は、そう言うと、再び、全身の「筋肉」に、意識を集中させた。
(頼む…!『筋肉』の神よ…!俺に、力を…!)
割男は、心の底から、そう願った。
その時だった。
「…!!!!」
割男の「筋肉」が、まるで、別次元のエネルギーと共鳴し、見たことのない反応を、見せ始めた。
「…な、なんだ…!?」
割男は、自分の「筋肉」に、起きている「異変」に、驚愕した。
「…俺の、『筋肉』が…!?」
その「筋肉」は、まるで、生き物のように、蠢き、黄金色の、眩い光を、放ち始めたのだ。
「…うおおおおおおお!!」
割男は、雄叫びを上げながら、その「筋肉」の、示す方向へ、意識を、集中させた。
「…はあああああ!!」
次の瞬間、割男の、全身の「筋肉」から、黄金色の、エネルギー波が、放出された。
「…な、なんだ、この力は…!?」
バルザックは、その、圧倒的な「筋肉」のエネルギーに、思わず、たじろいだ。
「…これが、俺の、『筋肉』の、真の力…!」
割男は、そう呟くと、
「…マッスル・エナジー・フルバースト!!」
そう、叫んだ。
次の瞬間、割男の、全身の「筋肉」から、先ほどよりも、さらに強力な、黄金色の、エネルギー波が、放出された。
そのエネルギー波は、まるで、巨大な竜巻のように、渦を巻きながら、周囲の、黒い炎を、吹き飛ばしていく。
「…ば、馬鹿な…!?『カースド・フレイム』が、消されていく…!?」
バルザックは、信じられない、といった様子で、目を見開いた。
「…はあああああ!!」
割男は、さらに、雄叫びを上げ、
「…マッスル・メテオ・ストライク!!」
そう、叫んだ。
次の瞬間、割男の、右腕の「筋肉」が、異常なまでに、膨張し、そして、
「…でやあああああ!!」
渾身の、右ストレートが、繰り出された。
その拳は、まるで、流星のように、一直線に、バルザックへと、向かっていく。
「…ぐっ…!?こ、この力…まさか…!?」
バルザックは、その、圧倒的な「筋肉」の、エネルギーに、恐怖を覚え、
「…『カースド・ウォール』!!」
呪文を唱え、黒い炎の、壁を、作り出した。
しかし、
「…無駄だあああああ!!」
割男の、拳は、その壁を、いとも簡単に、突き破り、
「…ぐああああああ!!」
バルザックの、体に、直撃した。
「…がはっ…!?」
バルザックは、衝撃で、大きく吹き飛ばされ、そのまま、地面に、叩きつけられた。
「…ば、馬鹿な…こ、こんなことが…」
バルザックは、苦悶の表情を浮かべながら、そう呟いた。
「…お、覚えていろ…!こ、この借りは、必ず…!」
そう言い残すと、バルザックは、黒い霧と共に、その場から、姿を消した。
「…ま、待て…!」
割男は、バルザックを、追おうとしたが、
「…ぐっ…!?」
その場に、膝をついてしまった。
「…シックス!大丈夫か!?」
村人たちが、割男に、駆け寄ってくる。
「…ああ、大丈夫だ…。それより、ガンガンと、エルファは…!?」
「…そ、それが…」
村人たちは、皆、暗い表情を浮かべ、首を横に振った。
「…そんな…」
割男は、そう言うと、再び、燃え盛る森の中へと、駆け出そうとした。
「…待て、シックス!」
村人たちが、割男を、制止した。
「…もう、手遅れだ…。あの炎の中に入ったら、無事では、済まない…」
「…しかし…!」
「…気持ちは、分かる…。しかし、今は…」
「…くそっ…!」
割男は、そう言うと、悔しそうに、拳を、地面に叩きつけた。
その時、
「…う、うぅ…」
微かに、うめき声が、聞こえてきた。
「…!?」
「…この声は…!?」
割男と、村人たちは、声のする方へ、駆け寄った。
「…ガ、ガンガン…!?」
そこには、瓦礫の下敷きになりながらも、エルファを、庇うように、抱きかかえている、ガンガンの姿があった。
「…ガ、ガンガン!無事だったのか…!?」
「…お、お前は…シックス…?」
ガンガンは、割男の姿を、認めると、力なく、微笑んだ。
「…ああ、無事だ…。エルファも、なんとか…」
「…そ、そうか…」
割男は、そう言うと、安堵の表情を浮かべた。
「…しかし、お前さん…その『筋肉』…一体、何が…」
ガンガンは、そう言いながら、割男の「筋肉」を、指差した。
「…ああ、これか…」
割男は、自分の「筋肉」を、見つめながら、そう言った。
「…俺にも、よく、分からないんだ…。しかし、この『筋肉』が、俺に、力を、与えてくれた…」
「…そうか…」
「…それより、ガンガン、お前こそ、大丈夫か…?」
「…ああ、俺は、ドワーフだからな。この程度の、炎、どうってことねえ…」
ガンガンは、そう言って、強がってみせたが、その体は、明らかに、ダメージを負っていた。
「…さあ、早く、ここから、脱出するぞ…!」
割男は、そう言うと、エルファを、背負い、
「…皆、俺に続け…!」
そう言って、村人たちを、先導した。
割男たちは、なんとか、森から、脱出することに成功した。
しかし、その代償は、あまりにも大きかった。
森は、黒い炎によって、焼き尽くされ、村も、大きな被害を受けた。
そして、エルファは、依然として、意識不明の状態が、続いていた…。
「…エルファ…」
割男は、エルファの、寝顔を、見つめながら、そう呟いた。
「…必ず、助けるからな…」
割男は、そう言うと、エルファの、手を、力強く握りしめた。
「…シックス様、どうか、お力落としなく…」
村人たちも、心配そうに、エルファを、見つめている。
「…ああ、ありがとう…」
割男は、そう言うと、力なく、微笑んだ。
「…しかし、これから、どうすれば…」
割男は、そう言いながら、遠くを見つめた。
その時、
「…シックス様、ガンガン様、お話があります…」
村長が、割男とガンガンに、話しかけてきた。
「…話?」
「…なんだ?」
「…実は、この村に伝わる、『古い言い伝え』がありまして…」
「…『古い言い伝え』…?」
「…はい。…それによると、この村の、北の山奥に、『癒しの洞窟』なるものが、存在する、と…」
「…『癒しの洞窟』…?」
「…はい。…そして、その洞窟には、『奇跡の水』が、湧き出ている、と…」
「…『奇跡の水』…?」
「…はい。…その水を飲めば、どんな怪我や、病気も、治ると、言われています…」
「…そんなものが…」
「…しかし、それは、あくまでも、言い伝え…。実際に、その洞窟を、見た者は、誰一人として、おりません…」
「…しかし、その『奇跡の水』があれば、エルファを、救えるかもしれない、ということか…?」
「…はい。…もし、その言い伝えが、本当ならば…」
「…分かった。俺は、その『癒しの洞窟』を、探してみる」
割男は、そう言うと、力強く、頷いた。
「…しかし、シックス、お前さん、一人で行くつもりか…?」
ガンガンが、心配そうに、割男に尋ねた。
「…ああ。…これは、俺の、責任でもあるからな…」
「…そうか。…しかし、気をつけろよ。この一件、ただの火事とは思えねえ…。何か、裏があるはずだ…」
「…ああ、分かっている」
「…もし、何かあったら、すぐに、戻ってこい。俺たちも、ここで、待っている」
「…ああ、ありがとう、ガンガン…」
割男は、そう言うと、ガンガンと、力強く、握手を交わした。
「…村長さん、エルファのことを、頼みます」
「…はい、お任せください」
割男は、そう言うと、村長に、深々と頭を下げた。
「…必ず、エルファを、助けてみせる…!」
割男は、そう言うと、固く決意を込めた表情で、北の方角を、見つめた。
その瞳には、強い意志の光が、宿っていた。
そして、割男の、新たな旅が、今、始まろうとしていた…。